1997 Fiscal Year Annual Research Report
軟体動物の起源と系統に関する古生物学・発生学・分子生物学的アプローチ
Project/Area Number |
09304049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
棚部 一成 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20108640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊佐治 鎮司 千葉県立中央博物館, 学芸員 (40280747)
加瀬 友喜 国立科学博物館地学研究部, 室長 (20124183)
遠藤 一佳 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (80251411)
上島 励 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (20241771)
大路 樹生 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (50160487)
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Keywords | 軟体動物 / 起源 / 系統 / 初期発生 / 形態形成 / 分子系統学 / 古生物学 |
Research Abstract |
1.形態形成に関する研究 棚部は鳥羽水族館の内山公夫氏と共同で、原始的軟体動物頭足類のオウムガイについて、胚発生初期から中期にかけての胚殻微細構造の形成過程を走査型電子顕微鏡を用いて調べた.その結果、オウムガイの初期胚殻の形態・構造は鞘形類やアンモナイト類のものと大きく異なり、むしろ原始的軟体動物の単板類との類似性が明らかになった(Tanabe & Uchiyama,1997).また、棚部は伊佐治と共同で、現在、オウムガイの初期胚の外套膜および体管原基の微細構造を透過型電子顕微鏡を用いて調べ、他の軟体動物のものと比較検討中である.大路は原始的棘皮動物のウミシダ類(ウミユリ綱)の発生学的研究を行い、形態形成と石灰化の過程を明らかにしつつある. 3.分子系統学的研究 上島は、軟体動物に近縁と考えられている腕足動物のホウズキチョウチンとシャミセンガイのミトコンドリアmtDNAゲノム構造の解析を行った。ゲノム上の遺伝子配置は、両者とも既知の動物とは全く異なっており、互いに類似性が認められなかった。また、シャミセンガイでは分子進化速度が速くなっていることが示唆されたが、ホウズキチョウチンの各蛋白質遺伝子のアミノ酸配列は軟体動物に類似しており、腕足動物門と軟体動物門が近縁であることが示唆された。 3.生鉱物学的研究 軟体動物門を特徴づける石灰質殻体の形成構造について、遠藤は大学院生の更級と共同で、イタヤガイ科二枚貝3種の方解石からなる貝殻外層の結晶内タンパク質を精製分離し、N末端側のアミノ酸配列を決定した.また、cDNAを用いた一次構造の解析を行い、タンパク質に特異なアスパラギン酸の配列が認めた.得られたデータから、タンパク質のカルシウムイオン結合性と結晶構造の鋳型としての機能が推定された.
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Tanabe,K.: "Development of the embryonic shell structure in Nautilus." The Veliger. 40巻3号. 203-215 (1997)
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[Publications] Tanabe,K.: "Morphology and function of cephalupod buccal mass. In Savazzi,E. (ed.) Functional Morphology of Invertebrate Skeleton." John Wiley & Sons Inc.,London. (印刷中). (1998)
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[Publications] Uchiyama,K.: "Hatching of Nautilus nacromphalus in the Toba Aquarium,Japan. In Oloriz, F.and Rodriguz-Tovar,F.J. (eds.) Advancing Reserch on Living and Fossil Cephalopods." Plenum Publishing Croporation,New York. (印刷中). (1998)
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[Publications] Aronson,R.B.: "Retrograde community structure in the late Eocene of Antarctica." Geology. 25巻10号. 903-906 (1997)
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[Publications] Ueshima,R.: "Evolution of pulmonate gastorpod mitochondrial genomes : Comparisons of gene organizations of Euhadra,Cepaea and Albinaria and implications of unusual tRNA secontary structures." Genetics. 145巻. 749-758 (1977)
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[Publications] Isaji,S.: "Fine structure of the organic in the shell tubules of Sphaerium japonicum." Venus (Japanese Journal of Malacology). 56巻3号. 241-248 (1997)
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[Publications] 棚部一成: "古生物の科学I.古生物の概説・系統分類(分担執筆)" 朝倉書店(印刷中), (1998)