1997 Fiscal Year Annual Research Report
岩礁生態系のケミカルシグナルを介した種間関係の解明に関する生態学的研究
Project/Area Number |
09306012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷口 和也 東北大学, 農学部, 教授 (40282082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蔵多 一哉 国立函館工業高等専門学校, 工業化学科, 教授 (20041915)
大森 迪夫 東北大学, 農学部, 教授 (60152253)
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Keywords | 海藻 / 植食動物 / 海中林 / サンゴモ平原 / 化学的防御 / ケミカルシグナル / 種間相互作用 / テルペン |
Research Abstract |
漸深帯岩礁海底には浅所から深所にかけて海中林、小型多年生海藻群落、サンゴモ平原が帯状に分布している。小型多年生海藻は植食動物に対する化学的防御物質を生産すると考えられている。今回、日本沿岸に広く分布する褐藻アミジグサ(宮城県産)とサナダグサ(新潟県産)からアセトン抽出物を得て、エゾアワビを用いてセルロースアルミ板法で摂食阻害試験を行った。その結果、両種とも脂溶性画分中性部に強い活性が認められた。中性部を分離精製することによって、アミジグサ、サナダグサそれぞれ8種のジテルペンが活性物質として単離された。両種に共通する活性物質は6種であった。このうち、アミジグサは2種、サナダグサは1種のジテルペンが新規物質であった。以上の結果、これら2種は化学的防御物質を生産することによってサンゴモ平原に生育できると推定された。 帯状構造をなす海藻群落から周年にわたって植食動物を定量採集し、個体数によってそれらの組成を比較した。クラスター分析の結果、3種のクラスターに分解できた。クラスター1は最浅所のエゾノネジモク海中林とその近傍の無節サンゴモが優占する転石域、クラスター2はアラメ海中林、クラスター3は褐藻フクリンアミジが優占する小型多年生海藻群落とサンゴモ平原とそれぞれ対応した。以上の結果、底生動物群集は季節的変化をほとんど認めず、海藻群落と密接な関係にあることが明らかになった。 浅所の無節サンゴモが優占する転石域、アラメ海中林ならびにサンゴモ平原において着底、変態したキタムラサキウニを採集した。その結果、サンゴモ平原では多数、転石域では少数採集されたのに対し、海中林では全く採集されなかった。キタムラサキウニの主要な発生の場はサンゴモ平原であることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)