1997 Fiscal Year Annual Research Report
アデノウイルスベクターを用いた糖代謝機構の解明と糖尿病治療法の開発
Project/Area Number |
09357009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
岡 芳知 山口大学, 医学部, 教授 (70175256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
犬飼 浩一 東京大学, 医学部・附属病院, 医員(臨床)
片桐 秀樹 東京大学, 医学部・附属病院, 医員(臨床)
野見山 淳 山口大学, 医学部・附属病院, 医員(臨床)
江本 政広 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (50294640)
井上 寛 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (20294639)
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Keywords | 糖輸送 / インスリン / 糖尿病 / アデノウイルス / ウイルスベクター |
Research Abstract |
我々はアデノウイルスベクターを用い、また種々感染方法を工夫し、分化した脂肪細胞(3T3L1細胞)への組み替えアデノウイルスを用いた遺伝子導入発現を世界に先駆けて成功させた。この方法を用い、PI3キナーゼの活性化を阻害するdominant negativeなp85サブユニットを発現させると、インスリンによる糖輸送促進効果ならびにGLUT4のトランスロケーションへの効果は著明に抑制され、インスリンによる糖輸送促進機構におけるPI3キナーゼ活性化の重要性がさらに確認された。さらに、Rasの活性化がインスリンによる糖輸送促進に関わるとの説が提唱されていたが、dominant negativeなRasの変異体を発現させてインスリンによるRasの活性化を阻止しても糖輸送促進効果は障害されず、3T3L1脂肪細胞ではインスリンによる急性の糖輸送促進機構にRas活性化は関与しないことを明らかにした。 インスリン非依存型糖尿病で認められるインスリン分泌障害についてもアデノウイルスベクターを用いて解析を進めた。このインスリン分泌障害の原因として膵β細胞でのミトコンドリアグリセロールシャトルの障害が指摘されてきた。そこで、このシャトルの重要な酵素であるミトコンドリアグリセロリン酸脱水素酵素(mGPDH)の遺伝子をクローニングし、さらにインスリン非依存型糖尿病患者で遺伝子変異を検討した。また、糖尿病モデル動物であるGKラットの膵でも、この酵素活性の低下がインスリン分泌障害の原因として指摘されている。そこで、このラットの膵ラ氏島にアデノウイルスベクターを用いて遺伝子導入・発現を行い、この酵素活性の低下を改善させた。しかし、グルコース刺激によるインスリン分泌は回復せず、GKラットにおけるインスリン分泌障害の原因がmGPDH活性の低下にはないことを明らかにした。
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[Publications] Takeuchi Y, et al.: "Detection of variants in the mitochondrial glycerophosphate dehydrogenase gene in Japanese NIDDM patients." Diabetologia. 40. 339-343 (1997)
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[Publications] Katagiri H, et al.: "Roles of phosphatidylinositol 3-kinase and Ras on insulin- stimulated glucose transport in 3T3-L1 adipocytes." Am J Physiol. 272. E326-E331 (1997)
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[Publications] Ueda K, et al.: "Prevalence of the Trp64Arg missense mutation of the beta 3-adrenergic receptor gene in Japanese subjects." Metabolism. 46. 199-202 (1997)
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[Publications] Tanizawa Y, et al: "Direct stimulation of basal insulin secretion by physiological concentrations of leptin in pancreatic β cells." Endocrinology. 138. 4513-4516 (1997)
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[Publications] Ogihara T, et al: "14-3-3 protein binds to insulin receptor substrate-1,one of the binding sites of which is in the phosphotyrosine binding domain." J Biol Chem. 272. 25267-25274 (1997)
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[Publications] Tanabe K, et al: "Leptin induces proliferation of pancreatic β cell line MIN6 through activation of mitogenactivated protein kinase." Biochem Biophys Res Commun. 241. 765-768 (1997)
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[Publications] 保坂利男、岡芳知: "糖輸送担体" 糖尿病1:日本臨床社, 47-53 (1997)
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[Publications] 岡芳知: "糖毒性の分子機構" 最新内科学大系プログレス2:中山書店, 133-137 (1997)