1997 Fiscal Year Annual Research Report
生体肝移植におけるB細胞系の分化と機能に基づいた免疫制御療法に関する研究
Project/Area Number |
09357011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 紘一 京都大学, 医学研究科, 教授 (20115877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高倉 浩二 藤沢薬品工業株式会社, 薬理学・開発第一研究所, 研究員
阿曽沼 克弘 京都大学, 医学研究科, 助手 (40202626)
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 助手 (40252449)
猪股 裕紀洋 京都大学, 医学研究科, 助教授 (50193628)
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Keywords | 生体肝移植 / フローサイトメトリー / ・クロスマッチ / 抗ドナー抗体 / B細胞 / 急性拒絶 |
Research Abstract |
肝移植後の拒絶反応には、細胞性免疫が関与することが知られているが、B細胞を介した抗ドナー抗体による液性免疫の作用については臨床の場において充分解明されていない。生体肝移植前後のレシピエント血清を経時的に採取し、ドナー末梢血リンパ球(T及びB細胞)に対する抗ドナー抗体産生と拒絶反応の関係を解析した。 ドナー及びレシピエント58組に対して施工したflow cytometry(FC)を用いた抗体価測定で、術前抗体陽性例を5例(8.5%)に認めた。術前陽性例で40%に、陰性例で15%に拒絶反応を認めたが、予後に影響を及ぼす拒絶反応はなかった。一方、術後抗体陽性12例(20.7%)では100%に拒絶反応を認め、抗ドナー抗体産生の時期は臨床的拒絶反応の診断時期と同時か2-3日先行していた。また抗ドナー抗体は陽性例前例でIgMが発現しており、12例中5例でIgGも発現していた。抗ドナーIgM抗体産生は5例全例でIgG抗体産生に先行おり免疫グロブリンのclass switchingが認められた。術後抗ドナー抗体は血液型適合症例の拒絶反応時のみ発現しており、血液型不適合症例10例中4例に臨床的拒絶反応を認めたがいずれも抗ドナー抗体の発現を認めなかった。58例に51回の肝生検組織検査を施工したが、抗ドナー抗体は急性拒絶反応時のみ発現し、他の肝組織障害時には発現しなかった。 肝移植術後の抗ドナー抗体の発現は拒絶反応の時期に先行するため、拒絶反応のモニターとして有用である。抗ドナー抗体は血液型不適合症例では発現しておらず、HLA抗原よりもABH抗原の方が抗原性が高いことが推察される。臨床肝移植の急性拒絶反応におけるB細胞を介した液性免疫の関与が本研究により明らかとなり、現在抗ドナー抗体のサブクラス、肝組織内抗原に対する抗ドナー抗体の解析を行っている。
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