1998 Fiscal Year Annual Research Report
知識と技術をめぐる概念的研究-基礎的哲学研究と現代的課題との架橋-
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09410004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
一ノ瀬 正樹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (20232407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下野 正俊 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (70262053)
高山 守 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20121460)
天野 正幸 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40107173)
松永 澄夫 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30097282)
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Keywords | 所有 / 偶然性 / イデア / エピステーメ / 神話 / 法 / 判断力 |
Research Abstract |
我々は本年度、昨年度の成果に依拠しつつ、それをさらに展開することを試みた。具体的には、昨年度より鋭意実行されてきた研究を、歴史的展望の下で総括することが企図され、この点に関して重厚な研究成果を挙げることができた。他方、これらの研究は自ずと、知識を持ち、技術を行使する主体としての人間についての考察を指向あるいは包含し、この点から、本研究の次の段階への移行を可能とするものとなった。 一ノ瀬正樹は、「所有」概念について、一方では人間存在を「偶然性」という様相において理解することを通じて、その行為としての側面を明らかにし、他方ではバークリにおける因果理論の歴史的研究を通じて、当該概念が近代認識論において主体と神との関連においてどのように理解されてきたかを論じた。松永澄夫は、技術的知識が前提とする性格を体系的に整理・解明するという課題を、18/19世紀のフランス思想を鳥瞰的に論じる作業を通じて達成した。天野正幸は、プラトン哲学の基礎をなす「イデア」、「エピステーメ」の両概念に対する浩瀚な研究を通じて、ギリシャにおける技術観について、明瞭な理解を示した。高山守はヘーゲル『論理学』に対する文献的に精緻な考察によって、近代社会を成立せしめる「神話」としての法・社会制度が「仮象」という鍵概念によって理解できることを明らかにした。下野正俊は、メディア・テクノロジーの歴史的発展を論じる上で不可欠な、公共性の基盤をなす能力である「判断力」について、カント哲学の概念史的研究に依拠しつつ、一定の理解を提示した。
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[Publications] 一ノ瀬正樹: "On Contingency" 東京大学大学院人文社会系研究科哲学研究室『論集』. 17. 236-248 (1999)
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[Publications] 一ノ瀬正樹: "バークリにおける神と原因" イギリス思想の流れ-宗教・哲学・科学を中心として-. 90-113 (1998)
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[Publications] 松永澄夫: "18世紀総論" フランス哲学・思想事典. 101-111 (1999)
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[Publications] 松永澄夫: "19世紀総論" フランス哲学・思想事典. 211-220 (1999)
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[Publications] 高山守: "ヘーゲル『論理学』における「仮象(Der Schein)」論" 東京大学大学院人文社会系研究科哲学研究室『論集』. 17. 1-30 (1999)
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[Publications] 下野正俊: "The Systematic Position of the Power of Judgment in Kant's “Critique of Pure Reason"" 東京大学大学院人文社会系研究科哲学研究室『論集』. 17. 225-235 (1999)
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[Publications] 天野正幸: "イデアとエピステーメー -プラトン哲学の発展史的研究-" 東京大学出版会, 624 (1998)