1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09410007
|
Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
黒積 俊夫 名古屋大学, 文学部, 教授 (60038479)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金山 弥平 名古屋大学, 文学部, 助教授 (00192542)
田村 均 名古屋大学, 文学部, 教授 (40188438)
山田 弘明 名古屋大学, 文学部, 教授 (40106258)
|
Keywords | 内在論 / 実践的倫理学 / 観念 / 真理 / ロック / デカルト / プラトン / イデア |
Research Abstract |
1 近世以降現代までの哲学史の流れの中で、かつ従来のカント研究史の批判的検討を通してカント哲学を考察し、カントの理論哲学は、〈内在論〉であって、〈超越論〉ではなく、倫理学(実践哲学)は〈実質的価値倫理学〉であって、〈形式的規範倫理学〉ではないとする新解釈を確立し、著書・論文・口頭発表を通じて公的に提唱した。(黒積俊夫) 2 とくに近世フランス哲学において、アイデアリズムの根幹をなす概念の歴史的分析を行った。すなわち、デカルトを中心とする17世紀のテキストによって、概念、思考、真理、確実性、神などのタームを歴史的に正確に捉え直し、近世的アイデアリズム理解の基礎を構築した。この作業によって、現代哲学の諸問題を解決する視野が開けてくるものと期待される。(山田弘明) 3 本年は、自己の認識の問題について特に考慮した。デカルトのコギト命題を経験論的に分析すると、自己の認識が、自分の身体の認知という水準と、社会的な役割の受容という水準に分割され、特に、「我あり」の不可疑性が、動物の生存における身体的自己認知の必然性に帰着することを見出した。(田村均) 4 プラトンのイデア論と善原因の関係についての考察を進め、(1)『パイドン』の善原因説は、最終的に魂不滅論証のために提示され、それがまた必然的にイデア論の導入に通じることをOxford Studies in Ancient Philosophy,XVIII,2000掲載論文にて示す。(2)『国家』で善のイデアについて説明する3つの比喩は、そこへと向かう探求のプログラムを示すものであることを明らかにする。(1)と(2)を通じて明らかになるのは、プラトンにとって第1に重要であるのは、完成されたイデア論よりもむしろロゴスによる探求であること、である。(金山弥平)
|
Research Products
(26 results)
-
[Publications] 黒積俊夫: "内在論としてのカント先験哲学"名古屋大学文学部研究論集. 132(哲学44). 73-96 (1998)
-
[Publications] 黒積俊夫: "「心身問題」をめぐって"名古屋大学哲学論集. 4. 1-15 (1998)
-
[Publications] 黒積俊夫: "超越論から内在論へ-真のカント理解のために-"西日本哲学年報. 6. 29-40 (1998)
-
[Publications] 黒積俊夫: "ヘーゲルの経験理論とその挫折-『意識経験学』から『精神現象学』へ-"名古屋大学文学部研究論集. 135(哲学45). 151-174 (1999)
-
[Publications] 黒積俊夫: "経験論哲学と哲学的経験論の間-ロック-カント-シェリング-"名古屋大学文学部研究論集. 138(哲学46)(印刷中). (2000)
-
[Publications] 黒積俊夫: "ヘーゲルからカントへ"西洋哲学におけるアイデアリズムの問題史的研究(科学研究費補助金研究成果報告書). 1-11 (2000)
-
[Publications] 黒積俊夫: "Kants Transzendentalphilosophie als die immanente"Proceedings of the Twentieth World Congress of Philosophy. オンライン・システム(作成中). (2000)
-
[Publications] 山田弘明: "コギト・観念・真理-マルブランシュとデカルト-"名古屋大学文学部研究論集. 132(哲学44). 1-24 (1998)
-
[Publications] 山田弘明: "パスカルとデカルト"名古屋大学文学部研究論集. 135(哲学45). 9-35 (1999)
-
[Publications] 山田弘明: "デカルトの永遠真理創造説についてのノート(上)"名古屋大学文学部研究論集. 138(哲学46)(印刷中). (2000)
-
[Publications] 山田弘明: "パスカルにおける真理"名古屋大学哲学論集(黒積俊夫先生退官記念論文集). 特別号(印刷中). (2000)
-
[Publications] 田村 均: "The Modern Concept of Man and Hume on Personal Identity"Papers for the 24th Hume Conference at Monterey,California (ed. by conference Co-Directors). 39-43 (1997)
-
[Publications] 田村 均: "感覚する個人-センス・データ論批判と自然主義-"分析哲学の現在(藤本隆志、伊藤邦武編著 世界思想社). 59-92 (1997)
-
[Publications] 田村 均: "哲学的認識論はいつから科学オンチになったのか?"科学哲学. 30. 29-42 (1997)
-
[Publications] 田村 均: "デカルトとイギリス経験論"デカルト読本(湯川桂一郎、小林道夫編著 法政大学出版局). 192-201 (1998)
-
[Publications] 田村 均: "自己犠牲をめぐる三つの物語-エウリピデス、ティム・オブライエン、宮沢賢治-"名古屋大学文学部研究論集. 135(哲学45). 37-71 (1999)
-
[Publications] 田村 均: "私は考える、ゆえに、何があるのか?-コギトの自然化と社会化の試み-"名古屋大学文学部研究論集. 138(哲学46)(印刷中). (2000)
-
[Publications] 金山弥平: "無知の自覚-ソクラテスの倫理と宗教-"中部哲学会年報. 30. 105-120 (1998)
-
[Publications] 金山弥平: "プラトン自然学の始まり(上)-『パイドン』の内にアリストテレスが見たものと見通したもの-"名古屋大学文学部研究論集. 138(哲学45). 73-80 (2000)
-
[Publications] 金山弥平: "プラトン自然学の始まり(下)-『パイドン』の内にアリストテレスが見たものと見通したもの-"名古屋大学文学部研究論集. 138(哲学46)(印刷中). (2000)
-
[Publications] 金山弥平: "プラトン『国家』における三つの比喩と善の探求-506D8-E4の解釈-"名古屋大学哲学論集(黒積俊夫先生退官記念論文集). 特別号(印刷中). (2000)
-
[Publications] 金山弥平: "The Methodology of the Second Voyage and the Proof of the Soul's Indestructibility in Plato's Phaedo"Oxford Studies in Ancient Philosophy. 18. 41-100 (2000)
-
[Publications] 黒積俊夫: "カント解釈の問題"渓水社. 316 (2000)
-
[Publications] 田村 均 他3名: "科学を考える"北大路書房. 395 (1999)
-
[Publications] 金山弥平 他2名: "セクストス・エンペイリコス『ピュロン主義哲学の概要』"京都大学学術出版会. 457+25 (1998)
-
[Publications] 金山弥平 他2名: "G.E.R.ロイド『後期ギリシア科学』"法政大学出版局. 291+21 (2000)