1998 Fiscal Year Annual Research Report
権力と権威-古代インドにおける王権と宗教伝承の諸相-
Project/Area Number |
09410011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井狩 彌介 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (40142012)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡瀬 信之 東海大学, 文学部, 教授 (00056110)
矢野 道雄 京都産業大学, 国際言語科学研究所, 教授 (40065868)
藤井 正人 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (50183926)
徳永 宗雄 京都大学, 文学部, 教授 (70143998)
赤松 明彦 九州大学, 文学部, 教授 (80159326)
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Keywords | 古典インド / 王権 / マハーバーラタ / アルタシャーストラ / インド法典 / ダルマ / 王法 |
Research Abstract |
古代インドにおける政治権力と宗教権威との関係構造とその歴史的展開の問題を、権力の中心に立つ王と、正統な宗教儀礼伝承を独占するブラーマン集団との関係に焦点をあてて研究を進めてきた。具体的な研究手続きとしては、前者を中心とする「王権政略論(アルタシャーストラ)」文献と、後者の社会規範を規定する「法典(ダルマシャーストラ)」文献における王権関係記述を分析し、王権をめぐる権力と権威との相関関係の歴史的展開を探ることに本研究の焦点を置いた。 本年度は、前年度に引き続き、1)関係基本資料データの整備、2)マハーバーラタの王権論(特に、第12巻に含まれる「王法」章)の検討を中心課題として研究を進めた。資料データとしては、重要テクストの関係部分をコンピュータ・ファイルとして入力し、共同研究者の共有データとして蓄積した。いっぽう、マハーバーラタ王法章の文献学的に精密な総合検討を進めた結果、本テクストが「アルタシャーストラ」と「ダルマシャーストラ」との相互影響の歴史的展開の経緯において重要な橋渡しの位置付けをもつことを明らかにし得たと考える。法典とは異なった背景に立つ王権政略論が法典のうちに取り入れられ、その結果、ヒンドゥイズムの中核にある法典の基本概念である「ダルマ(法)」の概念枠が拡大されてゆく過程についての多くの新たな知見が得られた。また、古代王権の儀礼構造に関し、ヴェーダ文献とプラーナ文献の王権儀礼の儀礼構造の枠組みの比較をおこない、古代王権の宗教的性格の特徴を明確にした。
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