1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09410032
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
斎藤 久美子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70046457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 承玄 京都大学, 教育学研究科, 助手 (40303797)
河合 俊雄 京都大学, 教育学研究科, 助教授 (30234008)
岡田 康伸 京都大学, 教育学研究科, 教授 (90068768)
山中 康裕 京都大学, 教育学研究科, 教授 (30080162)
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Keywords | 臨床家教育訓練 / 臨床的観察 / 子どもの対人行動 / プリミティブ表出 |
Research Abstract |
1. 臨床心理学における観察機能の研究として、観察対象を児童期の一般健常児及び臨床児とし、心理臨床家との間の対人的自由行動を観察した。一般健常児は、一定の条件のもと臨床家が同室して自由遊びを行い、その遊びの様子をビデオ録画の後、同室した臨床家が記録した。臨床児は、臨床家が自分の担当した遊戯療法事例の中から1セッション分の記録を選出した。子どもの遊びや臨床家の体験を多視点から包括的に把握し得るような57項目からなる記述用紙を作成し、各臨床家に記録をもとに記述を求め、観察の実態を検討した。その際、二者の関係性の変化が顕著になるであろう「プリミティブ」と感じられる場面を抽出し、他の場面との比較を行った。 2. 1.の記述用紙の項目を「遊びの質」「プリミティブ表出が子ども及び臨床家に与えた効果」「遊びの過程」を表す、上位項目にまとめるとともに、臨床家及び子どものプリミティブ表出に対する親和性について「親和」「違和」「乖離」の3タイプの評価を行い、プリミティブ表出の性質分類等の分析・検討を加えた。このように第三者的視点から、遊び、子どもの様子、観察者である臨床家の体験を多角的に捉え直すことによって、プリミティブ表出の持つ意味や子どもの再理解が促され、臨床家と子どもとの関係性の見直しが行われた。このことから本研究の臨床家教育訓練としての有効性が示唆された。また、得られた事例を詳細に検討することによって、プリミティブ表出の治療的意義が見いだされ、臨床心理学的に意義深い知見が得られた。更に、一般健常児と臨床児を一貫した楔点で相互比較的に検討し、その差異や共通点を再発見したことは、より効果的、総合的な子ども理解の可能性を示唆するものであった。以上のことから、本研究に用いた指標は、子どもの理解において、臨床心理学的、臨床教育学的に有用であることが認められた。
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