1998 Fiscal Year Annual Research Report
英語圏における多文化社会に関しての学際的比較研究-カナダ・アメリカ・イギリス・オーストラリアの多文化主義
Project/Area Number |
09410048
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Research Institution | Toyo Gakuen University |
Principal Investigator |
宮井 勢都子 東洋学園大学, 人文学部, 教授 (10200114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高村 宏子 東洋女子短期大学, 欧米文化学科, 教授 (40216792)
遊 みか 東洋学園大学, 人文学部, 助手 (20286214)
小川 晃一 東洋学園大学, 人文学部, 特任教授 (80000652)
西村 由起子 東洋学園大学, 人文学部, 教授 (70198513)
梅山 香代子 東洋学園大学, 人文学部, 教授 (20151938)
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Keywords | 多文化主義 / 人種 / 民族 / 移民 / 教育 / アイデンティティ / 言語政策 / 国民統合 |
Research Abstract |
今年度は、2か月に1回のペースで例会を開き、それぞれの研究分野に関連する論文、また個別研究の中間発表を行った。こうした例会での議論を通して、多言語主義、多文化教育、多文化主義をめぐる議論が、それぞれの研究地域においてどのような問題を提起しているか検討した。 多文化主義とは流動的な概念であり、その用語が喚起する概念は地域によっても、論者によって、また政策として論じているか運動として用いているかによっても異なり、いまだに個別に概念定義する以外には一定の定義付けをすることは困難であると言える。しかし、重要なことは、一つの国民国家内に存在する複数民族・複数文化の共存のあり方をめぐる議論は、国民統合に対するコンセンサスの問いなおしを行うことによって、それぞれの国のナショナリズムの質や建国理念の違いを浮き上がらせている。たとえば、カナダにおいては多文化主義が憲法の中で明文化されており、多文化主義自体がカナダのナショナリズムの一角をなしている。それに対してアメリカ合衆国においては、建国の理念への同化を求めるアメリカニズムのあり方に対する批判として多文化主義が主張されている。 90年代に展開した多文化主義論争は、それぞれの地域でこれまでどのような「資質」を備えた人間を「国民」あるいは「市民」として承認してきたか、と同時にどのような人々を「他者」化してきたのかというcitizenshipにつながる問題をも提起している。 今後は報告書作成をめざし、個別のテーマにそって研究をすすめていきたい。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 西村由起子: "アメリカにおける「二言語教育」論争-カルフォルニアのProposition227をめぐって" 東洋学園大学紀要. 7. 1-13 (1999)
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[Publications] 宮井勢都子: "多文化教育-多様なアイデンティティを結ぶ絆の模索" 明石紀雄・川島浩平(編・著)『現代アメリカ社会を知るための60章』(明石書店). 173-176 (1998)
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[Publications] 宮井勢都子: "多文化社会アメリカにおけるホームスクール運動-「価値」の継承をめぐる葛藤" 東洋学園大学紀要. 7. 15-26 (1999)
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[Publications] 遊みか: "カナダの多文化教育-州の教育政策と多文化主義" 東洋学園大学紀要. 7. 27-40 (1999)
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[Publications] 梅山香代子: "日本の安全保障と国連による安全保障" 東洋学園大学紀要. 7. 65-77 (1999)
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[Publications] 高村宏子: "第一次世界大戦とジェンダーに関する一考察-ジェーン・アダムスを中心として" 東洋女子短期大学紀要. 31. 99-117 (1999)
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[Publications] 高村宏子(共著・編): "アメリカ合衆国とは何か-歴史と現在" 雄山閣出版, 294 (1999)