1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09410101
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
合阪 学 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (50027976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江川 温 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80127191)
川北 稔 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70107118)
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Keywords | 人口移動 / 移民 / 帝国 / 国民国家 / ジェンダー |
Research Abstract |
本年度は、川本真治が共同研究に加わり、イギリスの帝国移民推進活動について研究をおこなった。 また、本年度は、研究期間の最終年度にあたるため、各研究分担者は前年度までに得られた知見にもとづきながら、新たな史料収集・分析をおこない、最終的な結果を年度後半に開かれた研究報告会にて発表した。川北、山本、藤川、川本はイギリス帝国の枠内での人口移動の実体を明らかにし、またその現象が帝国意識の形成と帝国拡大の動きにきわめて重要な役割を果たしていたことを証明した。杉本は、イギリスに遅れをとったもう一つの帝国であるフランスを対象として、移民と帝国意識の問題を研究し、この二要素の密接かつ複雑な関連性を確認した。また、竹中、原田、山田は、人種問題がその大きな研究テーマとなっている近代ドイツを取り上げ、移民と人種意識・国民意識の関連に迫った。藤本は、民族的多様性と国家形成におけるその影響が明らかにされつつあるロシア・ソ連について報告をおこなった。人口移動や移民の問題がいまだそれほど研究されていない前近代にかんしては、川瀬、合阪、江川が貴重な報告をおこない、前近代の特殊性と近代との連続性を、中東・地中海世界・フランスを例に取りながら指摘した。 これらの研究成果全体から明らかになったことは、世界システムの成立は、経済的な世界の一体化をもたらす一方で、人の移動をそれまでとはまったく異なるものにかえたこと、いわゆる近代の国民国家の成立と発展には、他者を意識させる要素としての移民の流入とならんで、国の内部での人口移動が大きくかかわっていたこと、また、人口移動現象は社会層や性の問題とも密接にかかわっており、それらを包括的に理解する研究の視点が重要であること、などである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 竹中 亨: "伊沢修二における「国楽」と洋楽:明治日本おける洋楽受容の論理"大阪大学大学院文学研究紀要. 40. (2000)
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[Publications] 原田 一美: "ナチ独裁下の子どもたち"講談社. 242 (1999)
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[Publications] 杉原 薫(編): "移動と移民ー地域を結ぶダイナミズム(講座世界歴史19)"岩波書店. 321 (1999)