1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09420005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中里 実 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (10164154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷 和弘 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 助教授 (60164216)
中川 淳司 東京大学, 社会科学研究所, 助教授 (20183080)
小寺 彰 東京大学, 教養学部, 教授 (80107490)
藤田 久一 神戸大学, 法学部, 教授 (70067619)
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Keywords | 地球経済統合 / EU / NAFTA / ASEAN / APEC / 国際組織 / GATT / WTO / CIS |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、本年度も基本的には研究計画調書の「研究計画・方法」に沿って研究をすすめた。即ち、各人の担当する組織および分野毎に、地域主義と普遍主義の関係、および、GATT/WTO体制との整合性という共通課題を縦軸に、各組織・分野の特有の課題を横軸に据えて、地域経済統合の法的意義を立体的に把握することを試みた。 地域経済統合は、その統合段階に応じて、(1)自由貿易地域(域内関税撤廃)、(2)関税同盟((1)に加え共通域外関税)、(3)共同市場((2)に加え資本や労働力移動の自由化)、(4)経済同盟((3)に加え税制、規制措置、経済政策の共通化)、(5)完全経済同盟((4)に加え通貨や共通予算措置等の採用)に分類される。EUは1992年に(3)を達成して、(4)や(5)をめざし、ASEAN(AFTA)は(1)を目指しているといえる。APECは(1)よりもさらにゆるい統合段階(開放経済連合)にあり、国際組織とさえいえない。このような多様な統合形態の中で、最も懸念されることは、域外第三国に対する差別的措置によって地域経済統合が要塞化することであり、そうならないようにGATT24条およびGATS5条が実効的に機能し、地域経済統合がGATT/WTO体制において補完的に機能することが極めて重要である。それを担保する機構的保証の強化がWTOにおいて求められるが、その達成は容易ではない。 各分野毎の特徴としては、例えば投資に関してはOECDの多数国間投資保護条約(MAI)は挫折して投資ルールをめぐる情勢は混沌とし、また航空のようにそもそもGATT/GATSの自由化ルールにはなじまない分野も存在し、多様性に富んでいる。地域経済統合は国内法のバモニゼーションを達成するのに大きく貢献し、また利害調整や協力に際して最も利用可能性の高いメカニズムである。何よりも地域経済統合の有するフォーラムとしての意義を過小評価すべきではない。
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[Publications] 中川 淳司: "条約に基づく国内法の調和(haimanization)の方法" 松田幹夫編『流動する国際関係の法』(国際書院). 187-217 (1997)
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[Publications] 小寺 彰: "国際レジームの位置" 岩沢正彦他編『岩波講座現代の法2国際社会と法』(岩波書店). 87-107 (1997)
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[Publications] 中谷 和弘: "地域経済組織と法(3) ASEANとAPEC" 横田洋三編『国際組織法』(有斐閣). (近刊).
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[Publications] 中川 淳司: "地球経済組織と法(2) NAFTA" 横田洋三編『国際組織法』(有斐閣). (近刊).
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[Publications] 小寺 彰: "WTO紛争解決手続における「紛争処理」の意味" 杉原高嶺編『紛争解決の国際法』(三省堂). 395-412 (1997)