1998 Fiscal Year Annual Research Report
変動金利の確率過程モデルと金利商品価格の実証的研究
Project/Area Number |
09440074
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楠岡 成雄 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (00114463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上木 直昌 姫路工業大学, 理学部, 助教授 (80211069)
吉田 朋広 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (90210707)
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Keywords | 数理ファイナンス / 確率解析 / 数値計算 / マリアバン・カリキュラス / リー環 / 確率テイラー展開 |
Research Abstract |
本年度の研究では、金利モデルの構築が目標であったが、それについては余りよい結果が得られなかった。一方、モデルが確定した後にパラメータの推定を行う場合に、高速に数値計算を行う必要がある。数理ファイナンスに現れる数値計算の問題は高次元積分を含む。効率のよい計算方法に関する研究が世界中で行われているが、今年度の研究で新手法を与えることができた。まだプログラムを組み実際に動かす段階までには行っていないが、従来とは全く違ったアイデアに基づくもので、理論上はかなり効率のよいものであると期待できる。以下その成果について述べていく。 数理ファイナンスのモデルのうち実用的なもののほとんどは拡散過程モデルで、マルコフ型の確率微分方程式で記述されている。その係数はなめらかであることが多い。しかし、その生成作用素は一様楕円型にならないばかりか、ヘルマンダー条件すら満たさない。確率微分方程式の近似解法としてオイラー・丸山近似やその高次近似が知られているが、オイラー・丸山近似は収束のスピードが遅く、高次近似はあまり実用的でない。さらに数理ファイナンスにおいては期待値をとる関数がリブシッツ連続だが微分可能でない場合がほとんどである(ノックアウトオプションのように連続ですらない場合もある)。今回考え出した新手法は、確率テイラー展開を本質的に用いるという点ではオイラー・丸山近似と発想が同じであるが、近似の段階で有限状態しかとらない離散分布の確率変数を用いる。このため乱数発生のビット数が大幅に節約できるので、計算の効率が飛躍的に上がると思われる。このようなことが可能になるのは、リー環論に基づき確率テイラー展開を緻密に行うためである。またそのようなことがよい精度をもたらすという根拠はマリアバンカリキュラスに基づく評価が与える。実はへルマンダー条件を満たさないような場合にもマリアバンカリキュラスが有効に用いることができるということは数学的にも全く新しい結果である。 現在の理論・手法はノックアウトオプションのような関数が不連続な場合には適用できないが、この場合にも最近P.L.Lionsらによって与えられたアイデアを援用してできないか、研究を継続中である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] S.Kusuoka: "Waves on fractal-like manifolds and effective energy propagation" Prob.Ther.and Rel.Fields. 110. 473-495 (1998)
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[Publications] S, Kusuoka: "A remark on default risk models" Advances in Mathematical Economics. 1. 69-82 (1999)