1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09440100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早野 龍五 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30126148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
比連崎 悟 奈良女子大学, 理学部, 助手 (60283925)
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Keywords | 中間子原子 / 量子色力学(QCD) / パイ(π)中間子 / エータ(η)中間子 / オメガ(ω)中間子 / 原子核実験 / GSI研究所 / 重陽子 |
Research Abstract |
1.パイ中間子原子の深い束縛状態と原子核中でのパイ中間子の質量変化。 鉛207に深く束縛されたパイ中間子原子のQ値スペクトルを詳しく解析し、1s及び2p状態の束縛エネルギー及び幅の決定を行った。パイ中間子の光学ポテンシャルのパラメターを変化させて束縛エネルギーと幅及び(d,3He)反応で予想されるスペクトル強度を計算し、これを実験データにfitすることで、パイ中間子の光学ポテンシャル、特にそのs波部分の強度を決定した。その結果、s波ポテンシャルは鉛原子核の中心部分で約20MeVの斥力であることを明らかにした。これを、パイ中間子の原子核中での有効質量に焼き直すと、パイ中間子が鉛原子核の中心部分では約14%重くなっていると言うこともできる。より精確にこの問題を研究するためには、1sの束縛ピークをはっきりと確認する必要がある。理論的には、鉛206を標的にすれば良いことが予想されており、ドイツのGSI研究所で鉛206を標的とする(d,3He)反応実験を行うたの準備を行った。実験は平成10年度秋に実施予定である。 2.エータ及びオメガ中間子の原子核束縛状態の生成 上記のパイ中間子実験から着想を得て、(d,3He)反応を用いて原子核中にエータ及びオメガ中間子を無反跳で生成する可能性について研究した。エータについては約4GeV、オメガについては約8GeVの重陽子ビームがあれば、中間子の無反跳生成が可能である。これらの中間子の原子核中でのポテンシャルを研究した結果、どちらの場合でも中間子の束縛状態の観測が可能であり、束縛エネルギーから中間子の原子核内での質量変化を導けることが分かった。中間子の原子核内での質量変化は、量子色力学(QCD)を理解する上で重要である。この研究成果に基づき、新たな実験をドイツのGSI研究所に提案し、受理された。
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Research Products
(1 results)