1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09440100
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Research Institution | THE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
早野 龍五 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30126148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
比連崎 悟 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (60283925)
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Keywords | パイ中間子 / エキゾティック原子 / 深い束縛状態 / 原子核内有効質量 / 原子核反応 / エータ中間子 / オメガ中間子 / GSI |
Research Abstract |
本研究は、π中間子原子の深い束縛状態、特にπ中間子鉛原子の1s及び2p状態の実験的観測と、その理論的解析を通じて、π中間子の核内における有効質量についての知見を得ることを目的として行った。また、η及びω中間子の核内有効質量の測定法についても新たな提案を行った。本年の成果は以下の通り。 1. π中間子原子の1s状態の発見をめざし、^<206>Pb(d,^3He)反応を用いた実験を行った。重い原子核に束縛されたπ中間子原子の1s状態は、π中間子の波動関数と原子核の重なりが大きいため、原子核内におけるπ中間子のふるまいを調べるのに有効である。しかし、これまでに1s状態が明確に観測されたことはない。理論によると、^<206>Pbを標的に選ぶことで、2p及び1sの深い束縛状態が十分有意なピークとして観測可能と予想された。この予想に基づいて実験を行った結果、2p及び1s状態の発見に成功した。現在、データを詳細に解析中であるが、1s状態の束縛エネルギーの解析からπ中間子の核内有効質量等を従来にない高い精度で決定できる見通しである。 2. π中間子原子実験の成功に触発され、(d,^3He)反応を用いてηおよびω中間子の原子核束縛状態を生成する可能性について理論的研究を行った。まず、中間子と原子核のポテンシャルを見積もり、クライン・ゴルドン方程式を解いて束縛状態の有無とその巾を見積もった。更にグリーン関数法とアイコナル法を用いて生成反応断面積を求めた。バックグラウンドに関しても詳細な検討を行った結果、(d,^3He)反応でこれらの中間子の核内質量を求めることが可能であるとの結論を得た。実験をドイツGSI研究所に提案し、採択された。
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[Publications] R.S.Hayano et al.: "Formation of η/ω-mesic nuclei using the recoilless (d,^3He) reaction" The European Physical Journal A. (印刷中). (1999)
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[Publications] S.Hirenzaki and H.Toki: "Neutron pick-up pion transfer reactions of the formation of deeply bound pionic atoms in ^<208>Pb" Nuclear Physics. A628. 403-416 (1998)
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[Publications] R.S.Hayano et al.: "Formation of η/ω-mesic nuclei using the recoilless (d,^3He) reaction" Proceedings of "Mesons and Light Nuclei" Prague,1998. (印刷中). (1999)
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[Publications] T.Yamazaki et al.: "Effective pion mass in the nuclear medium deduced from deeply bound pionic states in ^<207>Pb" Physics letters. B418. 246-251 (1998)