1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09440131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鹿児島 誠一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30114432)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 達生 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (00242016)
前田 京剛 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (70183605)
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Keywords | 有機導体 / スピン密度波 / 電荷密度波 / 熱履歴 / X線散漫錯乱 |
Research Abstract |
本研究の目的は,有機導体の低次元電子系の特徴を解明するため,1次元電子系の基底状態のひとつとされる密度波状態がかかわる電子状態の構造と,ダイナミクスを解明することである。具体的には,スピン密度波と電荷密度波の競合または共存の関係という未踏の問題を解明することを主軸にすえつつ,密度波状態における密度波そのものの挙動と、熱励起されたキャリヤ,あるいは残存フェルミ面の電子系の構造とダイナミクスを探求していく。 本年度は,極低温X線散漫錯乱装置を立ち上げるとともに,密度波状態における熱電能測定と比熱測定を強磁場下で行い,スピン密度波状態でなんらかの自由度の変化があることを発見し,その有力な候補は構造変化であることを指摘した。 まず極低温X散漫錯乱では,2K程度の極低温までの実験が必須であるので,液体ヘリウムを使うクライオスタットを購入し現有のX線実験装置に組み込んだ。予備実験では液体ヘリウムは40時間以上持続しており線散漫錯実験には十分であると考えられる。熱電能測定では新規現象が現れたので,今年度の測定としてはこれに重点を置くことにした。熱電能には,スピン密度波転位温度の12Kと,スピン密度波サブ相の境界のひとつとされる2Kとの間で熱履歴が現れた。強磁場下ではキャリヤの運動状態が変わるので,当然のことながら熱電能の値が著しく影響を受けるはずで,実際そのとおりであった。しかしながら、熱履歴の大きさは磁場による影響を受けないことが明らかになった。これを説明する有力な候補は,この温度域のスピン密度波にはなんらかの構造的変化がともなうということである。来年度には,実際に構造変化があるかどうかをX線実験によって直接的に調べる予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 鹿児島誠一: "Organic Superconductors-Conducting and Superconducting Charateristics" J.Korean Phys.Soc.31-1. 86-90 (1997)
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[Publications] 山口智弘: "Transport Properties of the Spin-Density-Wave Multiphase in (TMTSF)_2X" Synthetic Metals. 86. 2085-2086 (1997)