1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09440131
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 達生 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (00242016)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 京剛 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (70183605)
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Keywords | 有機導体 / スピン密度波 / 電荷密度波 / 熱履歴 / X線散漫散乱 |
Research Abstract |
本研究では,有機導体の低次元電子系の特徴を解明するため,一次元電子系の基底状態のひとつとされる密度波状態が関わる電子状態の構造と,ダイナミクスを解明することを目的とした研究を行なった。具体的には,スピン密度波と電荷密度波の競合または共存の関係という未到の問題を解明することを主軸にすえながら、密度波状態における密度波そのものの挙動と,熱励起されたキャリア,あるいは残存フェルミ面の電子系の構造とダイナミクスに関する詳細な研究を行なった。 特に本年度は、X線散乱測定用液体ヘリウムクライオスタントの製作が完了し、これによる、擬一次元伝導体(TMTSF)_2PF_6(以下PF6塩)及び(TMTSF)_2AsF_6(AsfF_2塩)のX線散乱の実験を1.6Kの低温まで行なうことに成功した。特に、低温におけるX線散漫散乱の測定によって、スピン密度波相に共存した、2k_F、及び4k_Fの周期を持つ電荷密度波の振舞を調べた。その結果、PF6塩では、板から12K(スピン密度波相転移温度)の温度範囲では電荷密度波が観測されるものの、3-4K以下で電荷密度波は消失するという事実が明らかとなった。また一方、AsF6塩では、PF6塩で蜆測された電荷密度波の振幅は極めて弱いことが明かになった。 上記の測定結果は、一次元電子系に特有な、電荷密度波とスピン密度波という異なる二つの電子基底状態が、互いに相関を持ちつつ、共存・消失するなどの特有な内部構造を持つということを示している。また、上記結果と並行してAsF6塩の比熱、熱電能の詳細な測定を行ない、電荷密度波相の消失、二つの物質で見られた密度波共存の違いの原因について有用なる知見を得た。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] V.A.Bondarenko 他: "A Thermopower Study of the SDW State of Quasi-one dimensioral Conductor (TMTSF)_2AsF_6" Solid State Communication. 107. 477-481 (1998)
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[Publications] S.Kagoshima 他: "Low-Temperature Diffuse X-ray Studies of Charge-Density Waves Coexisting with" Solid State Communication. (印刷中).