1998 Fiscal Year Annual Research Report
新手法を用いた電子と環境大気分子との共鳴散乱に関する包括的研究
Project/Area Number |
09440152
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
カレル フレデリックジョン 電気通信大学, 電気通信学部, 講師 (40262365)
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Keywords | 電子衝突 / 大気分子 / トロコイダル分析器 |
Research Abstract |
低エネルギー電子と分子の相互作用の研究では実験面で多くの進展がみられた。我々は、より優れた電子光学を駆使した新たなトロコイダル型アナライザーを利用した電子分光器を設計及び製作した。この新たなアナライザーは多重行路分散系を利用したもので、これは静電場をかけた反射板をトロコイダル分散板の終端に配置することにより、電子は分散板内で何回か反射されることを利用したものである。分散板にかける電圧により行路の往復回数が決められる。さらに我々は反射板を注意深く設計することにより、電子がトロコイダルアナライザーを通る際に生じる軌道のずれを打ち消すことを行った。また電子軌道計算によりトロコイダル型電子分光器は同心半球型のものと同等の性能を示すことが分かった。我々は分散板の制御により電子は13回往復しアナライザーを通ることを確認し、これは実際には3m以上の行路に相当する。よって多重行路分散器を用いることにより小型な装置で高分解が得られる。我々はこの分光器を用い、大気中に存在する電子のエネルギー分布に対して重要である窒素分子の2eVでの共鳴の観測に成功した。現在我々は電子検出器を強磁場中で使用できるものに改良中である。 コンピュータ電源制御及びデータ測定システムを製作し、このシステムは一般に使用されているシステムより低コストかつ便利で高性能である。これは、ソフト上で電源を浮かす方法をとることにより達成された。またこのシステムは1個またはそれ以上の電源出力を走査する際の電子のカウント数も測定できる。我々は同じシステムを用いて、エネルギー損失スペクトル、励起関数スペクトル及び二次元スペクトルなども得ることができる。 真空槽内の差動排気システムの製作が完了し、このシステムでは約100倍の圧力差が達成できた。これより高密度ガスでの実験が行えることが判り、また腐食性ガスで実験を行う際にも有効である。 改良点は現在、電子検出器、磁場コイルの改善及び偏向板の設置などが上げられ、この改良が終了すれば大気化学に関連した分子の幅広い断面積の測定が行えることが予想される。
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