1998 Fiscal Year Annual Research Report
アスペリティ接触の力学にもとづく、断層のすべり予測に関する研究
Project/Area Number |
09440162
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
吉岡 直人 横浜市立大学, 理学部, 教授 (10167728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 輝夫 東京大学, 地震研究所, 教授 (10114696)
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Keywords | 摩擦 / アスペリティ / 個体の接触 / マイクロメカニックス / インデンテーション / 断層運動 / 震源破壊核 / 前兆的すべり |
Research Abstract |
1. インデンテーション実験 昨年度構築したインデンテーション装置を用いて実験を開始した.今年度行った実験はまず一定荷重でサンプルに圧子を食い込ませておき、静止状態からサンプルを一定の速度で水平方向に移動させる、というものである.この結果、サンプルの移動開始とともに圧子はより深くサンプルに食い込むことが分った.ある、移動距離を経過したあと、圧子の食い込みは停止する.圧子が食い込みを停止するまでのサンプルの移動距離はサンプルの移動速度にはよらず一定である.さらに食い込みに必要な移動距離はサンプルの硬さに逆比例する.これら一連の観測事実は、すべり始める場合のアスペリティの変形機構に新たな視点を与えるものである.すなわち、すべり始めると、圧子にかかる荷重は主に圧子の前面のみで支えられ、このため圧子はサンプルにより深く食い込む.前面のみで荷重を支えることができる程度に食い込みが進行すると食い込みは停止する. 2. 断層面の波動透過実験 せん断応力下にある断層面が前兆的すべりを経て動的すべりに至る過程で、断層を通過する波動が変化する様子を実験によって観察した.まずせん断応力の増加によって透過波動は著しく増加することが観察された.また前兆的すべりの進行によってその増加率が減少することも観察された.これらの現象のメカニズムは、1.で述べたインデンテーションの実験観察から旨く説明することができる.すなわち接触しているアスペリティは応力を受け移動を開始するとより深く食い込もうとする.接触面に垂直な荷重は主に前面で支えられているが、後面の部分もこの段階ではまだ接触を保っており、その結果接触面積の増加がおこり透過波動が増加すると考えられる.ある程度すべり量が大きくなると、新たな面どおしの接触に移行するので増加率は減少する.これら一連のメカニズムはスティックスリップに至る過程を詳細に把握する上で重要である.
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[Publications] 吉岡直人: "震源域における前兆的すべりを能動的に検出するための研究の必要性とその可能性" 地震II. 51巻. 189-190 (1998)
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[Publications] Iwasa,K.and N.Yoshioka: "An experimentaltrial to detect precursory slips by transmission waves accrossa fault" Geophys.Res.Lett.25/20. 3907-3910 (1998)
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[Publications] 吉岡直人: "アスペリティ接触の動力学-摩擦現象の背後に潜む物理過程をもとめて-" 月刊地球. 20/9. 540-544 (1998)
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[Publications] 亀伸樹、山下輝夫: "断層面間の相互作用が働く系における地震発生の予測可能性" 地震II. 50. 181-187 (1998)
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[Publications] Yamashita,T.: "Simulation of seismici ty due to fluid migration in a fault zone" Geophys.J.Int. 132. 674-686 (1998)
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[Publications] Rybioki,K.P.and T.Yamashita: "Faulting in vertically intro mogeneous media and its geophysical implications" Geophys.Res.Lett.25. 2893-2896 (1998)