1999 Fiscal Year Annual Research Report
核酸の損傷を修復するメカニズムについての理論的研究
Project/Area Number |
09440211
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
相田 美砂子 広島大学, 理学部, 教授 (90175159)
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Keywords | 非経験的分子軌道法 / 密度汎関数法 / 分子動力学 / 核酸 / 生体高分子 / ピリミジン / ピリミジンダイマー / ラジカルカチオン |
Research Abstract |
核酸の塩基が修飾や損傷を受けると、それらは遺伝情報の正常な伝達に影響を与え、突然変異の原因となる。本研究では、量子化学的手法と分子動力学法とを合わせ用いることによって、核酸塩基の損傷およびその修復の過程を明らかにすることを目的とし、以下の結果を得た。 1.ピリミジンダイマーは、DNA中で二つの上下にスタックしているピリミジン塩基が、その炭素-炭素二重結合のπ結合同士が縮合して2本のσ結合となることによって四員環を形成し、二量体となったものである。各種ピリミジンダイマーおよびそのラジカルカチオンの構造を非経験的分子軌道法および密度汎関数法を用いて求めた。その結果、ピリミジンダイマーにおける四員環はピリミジンの種類にかかわらずねじれており、また、ラジカルカチオンにおいては、ピリミジンの種類にかかわらず、C6-C6'結合が伸びて弱くなっていることが見い出された。ピリミジンダイマーがもとに二つのピリミジンに戻る反応は、C6-C6'結合の開裂から始まる。 2.核酸や蛋白質の分子動力学法計算を実行するためには、それらが水溶液内に存在していることをあらわに表現することが必要である。水溶液内における巨大な生体高分子のシミュレーションが可能になるようにプログラムの改良し、実際の系に近い条件のもとでピリミジンダイマーを含む核酸についてのシミュレーションを実行した。ピリミジンダイマーが存在すると核酸の高次構造が大きく変化することが見い出された。
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[Publications] M.Aida: "Radiation-induced DNA damage and repair:an approach from ab initio MO method"Computational Molecular Biology. 211-243 (1999)
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[Publications] M.Tsuboi: "Raman spectrum of [5'-13C]thymidine:vibrations of its 5'-end atomic group"Spectrochimica Acta. A55. 1887-1896 (1999)
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[Publications] F.Pichierre: "Free-energy maps of base-amino acid interactions for DNA-protein recognition"Journal of the American Chemical Society. 121. 6152-6157 (1999)