1999 Fiscal Year Annual Research Report
極低温マトリックス分離分光法を用いた有機化学反応素過程の研究
Project/Area Number |
09440214
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 滋 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (40192447)
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Keywords | マトリックス分離分光法 / 短寿命反応中間体 / 光化学反応 / カルベン |
Research Abstract |
本年度は、前年度に導入された極低温マトリックス分離装置が本格的に稼働を始めた。まず、本装置の性能を確認するために、既知物質のマトリックス単離と、光化学的に発生させた反応中間体の分光学的な直接観測を行なった。本研究では、従来型の装置にクライオスタット内部回転機構の導入という改良を加えたが、本装置を用いてマトリックス単離させた試料、およびそれに光を照射して生成する不安定化学種の赤外吸取スペクトルを、従来型の装置を用いて得られたものと比較した結果、本装置は従来型と少なくとも同程度の機能を有することが判明した。この結果に基づいて、本研究の目的である不安定化学種と反応性分子との反応の研究に着手した。不安定化学種としてp-ニトロフェニルジアジメタンから光化学的に発生するカルベンを、また、反応性分子としてアセトニトリルを選び、極低温、不活性マトリックス中における両者の光化学的、および熱的反応の赤外、および紫外可視分光法による直接観測を試みた。その結果、アセトニトリルを含むアルゴンマトリックス中に単離されたカルベンは、光照射を継続させるか、あるいはマトリックスを30Kに昇温することによってアセトニトリルと反応し、それぞれ異なる生成物を与えることが判明した。マトリックスのホストガスとしてキセノンを用いた高い温度における熱的異性化経路の検出、重水素化アセトニトリル、あるいはアセトニトリル-N^<15>を用いた赤外吸収波数における同位体シフトの検出などの実験、さらに予想される化学種の密度汎関数法を用いた基準振動計算を行ない、カルベンとアセトニトリルとの反応で生成した化学種の構造について鋭意検討している。この様に、極低温マトリックス分離法は、有機化学反応の素過程の研究に有効であることが示された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Shigeru Murata: "New Findings in Photochemistry of p-Nitrophenyl Azide in the Presence of an Amine : Generation and Trapping of Enamines"Chemistry Letters. No.7. 597-598 (1999)
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[Publications] Sigeharu Wakabayashi: "Self-Assembly of 3-[4'-(Diethylboryl)phenyl]pyridine and 3-[3 '-(Diethylboryl)phenyl]-pyridine : Synthesis, Structural Features, and Stability in Solution"Journal of Organic Chemistry. Vol.64 No.19. 6999-7008 (1999)
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[Publications] Shingo lkeda: "Remarkable Effect of Electron Acceptors on Pyrene-Sensitized Decomposition of N-Phenylglycine"Chemistry Letters. No.10. 1009-1010 (1999)