1997 Fiscal Year Annual Research Report
ルテニウム系ペロブスカイト型酸化物の異常な遍歴電子物性
Project/Area Number |
09440241
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉村 一良 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70191640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 将樹 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90271006)
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Keywords | 核磁気共鳴 / インバー効果 / 遍歴電子磁性 / 強相関化合物 / SrRuO_3 / CaRuO_3 |
Research Abstract |
本研究では4d遷移金属系のルテニウム(Ru)のペロブスカイト型(GdFeO_3型)酸化物(Sr_<1-X>Ca_XRuO_3)に注目し、その磁性の機構をスピン揺動の立場から明らかにすることを目的とする。SrRuO_3は金属電気伝導性を示す遍歴電子系の強磁性転移体、インバー効果を示す。一方、CaRuO_3はやはり金属電気伝導を示し、Ruのモーメント間の磁気相互作用は反強磁性的であるにも関わらず、反強磁性の長距離秩序は観測されていない。この擬二元系の磁気的振る舞いを系統的にかつ微視的に理解するために、磁性を担っているRu自身の核磁気共鳴およびルテニウムと直接化学結合ボンドによって結ばれ金属的電気伝導を担っていると考えられる酸素の核磁気共鳴を行い、波動関数の対称性やミクロな磁気的ダイナミックスに至るまで詳細に調べ4d系の電子の振舞いを明らかにすることを目的として以下の実験を行った。1300℃における固相法によってSrl_<-X>Ca_XRuO_3系の試料を全組成域で合成を行い、現有の粉末X線解析装置、熱重量分析装置を用いて、結晶構造や酸素の不定比性に関して化学的にキャラクタリゼーションを行った。合成された試料について現有のスクイッド(磁場は最高5T)を用いた2Kから室温まどの磁化および磁化率測定、および現有の磁気天秤を用いた室温から1000℃程度までの高温磁化率測定を行い、マクロな磁性について詳細に調べた。また、現有の4端子法による装置を用いて電気抵抗の測定を2Kから1000K程度まで行い、電気伝導性について詳細に調べ、磁気散乱による効果がTC以上で大きいことを見出した。更に、ウィーン工科大学と共同で比熱測定を行い、その結果をスピンの揺らぎの理論によって解析し、このスピンの揺らぎが組成によらずCaRuO_3に至るまで強磁性的であることを見出した。従って、これまで、Caリッチ側で反強磁性的であると考えられてきたのに反して、この系は全組成域で強磁性な相互作用が支配的であることが明らかになった。現在、購入したパルスNMR-タアクイジションシステムと現有のオックスフォード社製高分解能用超伝導マグネット(テスラトロンH、8T)を組み合わせてホームメイドのパルス核磁気共鳴(NMR)装置を改良しているが、それを用いて^<99,101>Ruや^<17>Oの核磁気共鳴を行い、さらにミクロな情報を得ることにより、この強磁性的なスピンの揺らぎについて検討していく予定である。
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[Publications] H.Kageyama: "Field-Induced Magnetic Transitions in the One-Dimensional Compound Ca_3Co_2O_6" J.Phys.Soc.Jpn.66. 1607-1610 (1997)
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[Publications] H.Kageyama: "Magnetic Anisotropy of Ca_3Co_2O_6 with Ferro-magnetic Ising Chains" J.Phys.Soc.Jpn.66. 3996-4000 (1997)
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[Publications] H.Kageyama: "Mossbauer Observation of the Quantum Levels of Fe^<3+> Inos Doped in 1D Ising Ferromagnet Ca_3Co_2O_6" Phvs.Rev.Letts.79. 3258-3261 (1997)
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[Publications] M.Kato: "Evidence for Antiferromagnetic Order in Bi_2Sr_2CuO_6 Phase with Stoichiometric Cation Composition" J.Solid State Chem.133. 372-378 (1997)
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[Publications] N.Tsujii: "Heavy-fermion behavior in YbCu_<5-X>Ag_X" Phvs.Rev.B. 55・2. 1032-1039 (1997)
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[Publications] N.Tsujii: "Kondo Lattice Formation in Cubic YbCu_5 Phase" Phvs.Rev.B. 56・13. 8103-8108 (1997)