1997 Fiscal Year Annual Research Report
走査型アトムプローブによる絶縁性薄膜からの光励起電界放射の原子レベルでの研究
Project/Area Number |
09450023
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
西川 治 金沢工業大学, 工学部, 教授 (10108235)
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Keywords | 走査型アトムプローブ / 光励起電界放射 / 電子のトンネル / 電界蒸発 / 電界放射 / ダイヤモンド / クラスター / マススペクトル |
Research Abstract |
金属または半導体の表面上に負の電界を印加すると、表面内へ電子を閉じ込めているポテンシャル障壁の幅と高さが減少し、電子が障壁をトンネル抜けして外部に放出される電界放射と呼ばれる現象が起こる。この場合、半絶縁性または絶縁性の材料に光を当てると、電流量が激増する。また、正の電界の場合も、表面に接近したガス原子と表面原子との間のポテンシャル障壁が縮小し、ガス原子から表面へ電子のトンネルが起こり、ガス原子が陽イオン化する電界イオン化が起こるが、この場合も、半絶縁性材料の表面上でのイオン化確率が光の照射により飛躍的に増大する。更に、表面原子が電界により陽イオンとして脱離する電界蒸発と呼ばれる現象も光照射により促進される。このような光励起電界放射・イオン化・電界蒸発現象は、表面近傍の電導性が光電導により格段と向上するためと説明されている。しかし、光照射に敏感に反応する表面の構造と電導性や電子状態、照射光の強度と波長、更に照射時間等による放射特性の変化を調べた研究例は、極めて少ない。その理由は、高電界を発生させるために求められる鋭い針状の試料の作製が困難な点にある。 そこで、研究代表者が考案したのが、平らな下地の上に成長したダイヤモンドの結晶等のように、微細な凹凸があれば、電界放射特性と組成分布を原子レベルで調べられる走査型アトムプローブ(Scanning Atom Probe,SAP)である。SAPの特異な点は、凹凸のある試料面上を微細な引出電極が走査する点にあり、この電極により試料面上の微細な突起の先端に高電界を発生させることが可能になった。この特性を生かして化学蒸着法により成長したダイヤモンドの薄膜を分析したところ、炭素原子がクラスターとして検出され、ダイヤモンド内の結合状態が均一でないことが明らかにされた。また、ダイヤモンドには大量の水素が含まれており、その濃度が深さと共に減少することも認められた。更に興味ある点は、試料に電圧パルスを印加した場合と、YAGレーザー光を照射して分析した場合とでは異なるマススペクトルが得られという注目するべき結果が得られた事である。
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[Publications] O.Nishikawa et.al.: "Development of a Scannig Atom Probe and Atom-by-Atom Mass Analysis of Diamonds" Appl.Phys.A. 66(in print). (1998)
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[Publications] O.Nishikawa et.al.: "Atomic Investigation of Individual Apexes of Diamond Emitters by a Scanning Atom Probe" J.Vac.Sci.Technol.16(in print). (1998)