Research Abstract |
本研究では腐食摩耗の機構を新生面からの溶解という電気化学的なアプローチで解明することである.本年度は以下の点を明確にした. (1)分極曲線の測定:腐食溶液としてNa_2SO_4(pH:7)),温度(20℃),材料としてSUS304鋼,純銅,64黄銅,純アルミニウムを用い,通常の分極曲線と電位急変法による分極曲線を測定した.SUS304の通常の腐食電位は-280mV,PP法で-1150mV,純銅が-160mVと-700mV,黄銅では-120mVと-1300mV,アルミで-920mVと-145mVを得た.これらのことから,いずれの金属でも新生面の腐食電位が低くなり,溶解しやすいことがわかる.また,アノード域ではSUS304が2オーダ,アルミが4オーダの電流密度の開きがあり,通常の面の耐食性が認められた.しかし,純銅と黄銅ではPP法での値が1オーダー以下であり,耐食性はみられない. (2)摩耗試験:上記環境中で,往復動滑り(ストローク:10mm),すべり速度200mm/s,荷重10Nでの摩耗試験を行った. (a)自然電位での摩耗実験では摩擦中の電位の低下がみられ,SUS304では412mV,純銅では121mV,黄銅では520mV,アルミでは743mVであった.これを,摩耗痕をアノード,非摩耗面をカソードとして計算するといずれも0.9〜8.5倍に入り,PP法の妥当性が評価できた. (b)電位を制御した摩耗実験をそれぞれ通常の分極曲線のカソード域,自然電位付近,アノード域で行い,ファラデーの溶解量と摩耗量の比較を行った.その結果いずれの場合も摩耗量と腐食量との差は0.47〜2.81倍であり,新生面の溶解のモデルが適用できることがわかった.
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