Research Abstract |
(1)OHラジカル注入による高圧混合気着火過程の反応シミュレーション:既に開発した定容燃焼反応プログラムを用いて,水素-空気とメタン-空気の混合気の高圧における反応過程を追及した。高圧での特性は,特にエンジンに関連するもので,最近注目されている希薄混合気の着火安定には,OHラジカルの注入が有効であると考えられる。当量比0.8,初期圧力1,10,50気圧,温度1300Kの混合気について,反応過程を計算して,特に初期圧力の影響を重点的に調べた。その結果,大気圧で寄与の大きい素反応に加えて,高圧で影響が増大して顕著になる幾つかの素反応があることが確認できた。又,水素の場合には,圧力上昇に伴って,20〜30気圧以上の領域で,反応誘起時間が増加する特異な傾向が見られたが,高圧領域での素反応の機構と速度定数の信頼性に問題があるかとも思われるので,今後更に検討する必要がある。0.01〜1%モル分率のラジカル注入によって,反応誘起時間は数分の1から1/10に短縮される。 (2)副燃焼室からの既燃ジェット注入によるメタン-空気混合気の着火実験:以前の実験では,副燃焼室体積:主燃焼室体積が1:1であり,混合気の予圧縮の影響があった。今回の実験では,副燃焼室体積:主燃焼室体積を1:10として,予圧縮の影響を低減した。当量比1のメタン-空気混合気を主・副燃焼室に満たし,初期圧力0.9〜1.4気圧で実験を行った。圧力変換器とイオンプローブを用いて,着火の状態を調べた。2つの燃焼室の境界に直径5mmのオリフィスがあり,既燃ガスジェットが形成される。0.9気圧では着火が起きなかったが,1気圧以上では着火が起きた。副燃焼室のイオンプローブの信号と主燃焼室のイオンプローブの信号の時間間隔から,着火遅れ時間を定義すると,約30msecであった。初期圧力の増加に伴い燃焼圧力も増加する。今後は,圧力を更に上げた実験を行うと同時に,主燃焼室に希薄混合気を副燃焼室に過濃混合気を用いた実験も行う予定である。
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