1997 Fiscal Year Annual Research Report
下水処理水を受け入れている河口干潟部における窒素変換機能と一酸化二窒素の生成
Project/Area Number |
09450198
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
楠田 哲也 九州大学, 工学部, 教授 (50037967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山西 博幸 九州大学, 工学部, 助手 (20240062)
大石 京子 九州大学, 工学部, 助手 (20110835)
久場 隆広 九州大学, 工学部, 助教授 (60284527)
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Keywords | 河川感潮部 / 干潟 / 河口 / 窒素変換 / 一酸化二窒素 / ガスフラックス / ガス輸送係数 / 下水処理水 |
Research Abstract |
博多湾に注ぐ都市河川感潮部を対象として,下水処理場を中心に上流,下流各1km以内に観測地点を設置し,満潮-干潮-満潮及び干潮-満潮-干潮の一潮汐に渡って1時間毎に水質,水温及び流速を測定した.同時に放流水の水塊移動を水温と水質の変動から検討した.水質の分析項目はN_2O,各DIN,塩分,pH,DOである.観測定点において各DINの物質収支の計算によって,対象水域における各DINの物質変換,物質移動を明らかにした.その結果,河川水より水温が高い下水処理場からの放流水は,N_2Oや各DINの高濃度水塊を形成したまま,一潮汐間に放流地点を中心に上流及び下流へ輸送されていた.高濃度水塊と下水放流水において,これらの物質の濃度比はNO_3-Nを除いて比較的良く一致し,水塊内での物質変換は比較的小さく河川水及び海水との混合のまま輸送されていると考えられる.また物質収支から,下水処理場より下流域におけるN_2Oの生産が大きいのは,底質及び放流水由来の窒素の物質変換に因るものと考えられる.以上の結果から,放流水を受ける水域において,特に河川感潮部におけるN_2Oの濃度には下水放流水の水質が大きく影響することが明らかになった.一方,大気中のN_2O濃度の経時変化は極端な場合を除いては300〜350ppbvとほぼ一定になっていた.ただし,水表面や地表面近くでN_2O濃度が極端に大きくなることも見られた.また,現地開空間のもとでN_2Oの濃度分布の測定を行った.物質収支式をもとに算出された水表面から大気中へのガスフラックスは,10^<-9>〜10^<-8>(mol/m^2/s)の範囲で変動した.さらに,摩擦速度の増加とともにガスフラックスやガス輸送係数の増加が見られた.今回の調査で得られたガス輸送係数は従来の研究で示される値よりも大きくなり,従来型の算定式では過小評価となることを示した.
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