演奏者に対するホールの音響効果に関する実験的研究

1997 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09450214
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 橘 秀樹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (80013225)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 坂本 慎一 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (80282599) ; 佐藤 史明 千葉工業大学, 工学部, 助手 (50286150) ; 矢野 博夫 千葉工業大学, 工学部, 助教授 (70114692)
• Keywords: コンサートホール / ステージ音響 / インパルス応答 / 音響設計法 / 楽器演奏者 / 主観評価実験 / マルチチャンネル再生システム

Research Abstract

コンサートホールなどの室内音響設計では、客席部における快適な音響性能を実現するとともに、ステージ上の演奏者が演奏しやすい条件を整えることが基本的に重要である。これまでに多くの研究者がコンサートホールの室内音響特性について研究を行っているが、ステージ上の演奏者に対する音響条件に着目した研究はきわめて少ない。そこで本研究では、ステージ上の演奏者が演奏しやすい音響条件を解明し、それを実現するための建築音響的手法を確立することを目的として、実験的研究を行っている。本年度は、以下の項目について検討を行った。
(1)ステージ上の音場計測法の開発およびそれを用いた実測調査
演奏者位置における音響特性を物理的に測定するための計測システムとして、無指向性音源の周りに超指向性マイクロホンを配置した計測システムを構築した。構築した計測システムを用いて、複数のホールステージ上を対象として音響特性の測定および物理的解析を行った。測定結果を用いて、主に初期反射音部分の時間構造、エネルギーレベルおよびそれらの方向情報に着目した物理的解析を行ったところ、ステージ形状の違いによる特徴的な違いが見られた。
(2)実験室内シミュレーション音場における主観評価実験
演奏者が演奏しやすい音響条件を探るためには、物理的解析とともに、楽器演奏者の主観的印象を調べることが必要である。そこで、実験室(無響室)内にマルチチャンネル再生システムを構築することにより、ホールステージ上を模擬したシミュレーション音場をつくり、プロのバイオリニストを対象とした主観評価実験を行った。物理的解析結果を基に、ステージ部分からの初期反射音および客席部分からの後期反射音の効果に着目して主観評価実験を行った結果、それらの反射音が演奏者の主観評価に大きく影響を与えることが確認された。さらに、バイオリン奏者以外に、フルート(木管楽器)、トランペット(金管楽器)奏者を対象とした評価実験にも着手した。

Research Products

• [Publications] 橘 秀樹、上野佳奈子: "ステージ音響に関する研究-シミュレーション音場におけるバイオリニストによる評価実験" 生産研究. 49-2. 12-15 (1997)
• [Publications] 橘 秀樹: "ステージ音響" 日本音響学会誌. 53-4. 306-310 (1997)
• [Publications] 上野佳奈子、佐藤史明、橘 秀樹: "ホールステージ上の音響特性の測定" 日本音響学会平成9年度秋季研究発表会講演論文集. 819-820 (1997)
• [Publications] 佐藤史明、橘 秀樹、山崎芳男、飯田一博、小野隆彦: "電気的音場合成による実験的コンサート" 日本音響学会平成9年度秋季研究発表会講演論文集. 821-822 (1997)