1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09450307
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
酒井 清孝 早稲田大学, 理工学部, 教授 (00063727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小久保 謙一 早稲田大学, 理工学部, 助手 (20287965)
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Keywords | 人工腎臓 / 透析 / 尿素 / イオン / 電気透析 / 抽出 / 界面活性剤 / キレート |
Research Abstract |
膜を通しての輸送現象は工学的には溶質の分離・精製技術として応用されている。逆浸透膜、気体分離膜、透析膜などはその良い例である。しかし、共存する多くの溶質中から特定の溶質のみを認識し、選択的に透過できる生体膜と比べると、人工膜の機能は不十分と言わざるを得ない。生体の腎臓は、ある大きさ以下の溶質を糸球体においてすべて濾過した後、尿細管において必要な溶質を再吸収して、残った不要な溶質を濃縮して尿として排出している。透析治療がさらに発展するためには、血液から病因物質のみを取り除く、あるいは透析液や濾液から必要なものを残し、不必要なものを濃縮して除去する必要がある。このような尿細管の機能を有する分離膜が作成できれば、人工腎臓治療は飛躍的に発展することが期待される。 当該研究では、溶質の選択的透過を行うために液体膜を利用し、特に、尿素、イオンおよびアミノ酸の分離が可能なシステムを構築することを目的とした。液体膜の選択性を保持したまま透過速度を大きくするために電位を利用した。液体膜には陽イオン性、陰イオン性の界面活性剤を用いて逆ミセルを形成させた有機溶液、および陰イオンおよび陽イオンに対して選択性のあるキレートを溶解させた有機溶液を用いた。液体膜として、疎水性のPTFE膜にそれぞれの有機溶液を含浸させたもの、あるいはそれぞれの有機溶液を親水性の高分子膜で挟んだものを使用した。それぞれの液体膜について、液体膜の形状、尿素およびイオンの透過速度および選択性などについての基礎的な検討を行った。 逆ミセル液体膜では、電位差をかけない場合においても、塩化ナトリウムの透過速度は尿素の透過速度の約2倍となった。これは、正抽出速度は同じであったが、塩化ナトリウムの逆抽出速度が大きいためであった。また、逆ミセル溶液を含浸型の液体膜として用いると、液体膜中に水の透過経路ができやすく、液体膜は不安定であった。したがって、逆ミセル溶液を用いる場合には、含浸型でない方がよいと考えられた。キレートを溶解させた液体膜の場合、1.5Vの電位差で、塩化ナトリウムの透過速度は尿素の約2倍であった。キレートの場合は逆ミセルの場合と比べ、含浸型の液体膜でも安定性に優れていた。以上の結果より、液体膜に界面活性剤、キレートを用いたいずれの場合も、イオンと尿素の透過速度に差が現れ、膜透過において選択性があることが分かった。また、それぞれの場合に適切な液体膜の形状も明らかになった。しかし、透過速度は不十分であり、今後さらに装置形状、操作条件を検討する必要がある。
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