1997 Fiscal Year Annual Research Report
結晶化過程におけるキラル識別機構の解明とそれを利用した普遍的光学分割法の確立
Project/Area Number |
09450330
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西郷 和彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (80016154)
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Keywords | 光学分割 / ジアステレオマ-塩法 / クリスタルエンジニアリング / 水素結合 |
Research Abstract |
我々はこれまでに,光学活性マンデル酸を分割剤として用い,種々のラセミ体1-アリールアルキルアミンの光学分割を系統的に検討し,分割剤と被分割物質の分子長の相補性が高効率分割達成のために最も重要な条件であることを見出している。さらに,生成するジアステレオマ-塩の結晶構造を詳細に検討した結果,双方の分子長が相補的な場合には,ジアステレオマ-塩の一方が,水素結合ネットワークおよびパッキングの両観点から安定となり,難溶性塩として晶出するということを見出している。 光学活性マンデル酸では,相対的に分子長の長いパラ置換1-アリールエチルアミンはほとんど分割できなかった。そこで,パラ置換1-アリールエチルアミンに対する新規分割剤として,これらと相補的な分子長を有する,2-ナフチルグリコール酸(2-NGA)を設計した。まず,ラセミ体の2-NGAの合成法を検討した結果,2-アセナフトンを出発原料とし,塩素によるジクロロ化および塩基処理の2段階で目的とする2-NGAのラセミ体を得ることができた。続いて,光学活性1-フェニルエチルアミンを分割剤として用いたジアステレオマ-塩法により,2-NGAを高効率で光学分割できることを見出した。次に,得られた光学活性2-NGAを分割剤として用い,種々のパラ置換1-アリールエチルアミンの光学分割を検討した。その結果,2-NGAが広範囲のパラ置換1-アリールリエチルアミンに対して極めて優れた分割能を示すこと分かった。また,得られた難溶性塩結晶の構造は,2-NGAの設計にあたり予想したものに極めて近い構造であった。このように,光学分割の系統的な検討により,分割剤の合理的設計に初めて成功した。
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