1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09450338
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相田 卓三 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00167769)
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Keywords | キラリティー / センシング / ポルフィリン / カルボン酸 / 全置換ポルフィリン / 記憶 / 不斉フォトクロミズム |
Research Abstract |
本研究は、水素結合を介して「不斉化合物の絶対配置に関する情報を自分自身の骨格内に読み込み、記憶可能な」全く新しいインテリジェントキラリティーセンシング分子の開発を目的としている。本研究では、この目的のために、全置換ポルフィリンを用いた。全置換ポルフィリンは、隣接する置換基間の立体反発のため、4つのピロールユニットが交互に上、下を向いたサドル型非平面構造を有する。従って、ピロールユニットの連結部位に異なる置換基が存在し、D2h-対称性を有する場合には、それ自体「不斉」であり、一対の鏡像体が存在する。しかし、ポルフィリン環の極めて高速な反転のため、鏡像体を分離することはできない。 本研究では、上記D2h-対称全置換ポルフィリンにマンデル酸の一方の鏡像体を混合すると、それが水素結合を介してポルフィリンの面の裏・表に捕捉され、さらに、この際、2つの可能なジアステレオアイソマ-の内の片方しか生成しないことをみいだした。この錯体を酢酸に溶解すると、捕捉されている不斉有機酸が不斉要素を持たない酢酸に置き換わるが、ポルフィリンは不斉有機酸との相互作用で得た情報をそのまま記憶し、可視領域において、特徴的な円偏光二色性スペクトルを示す。また、マンデル酸の他に広範な不斉カルボン酸を用いた場合にも、同様のポルフィリン骨格へのキラリティーの「読み込み」が可能であり、これを利用することにより、円偏光二色性スペクトルにより、カルボン酸の絶対配置を決定することができる。即ち、キラルな全置換ポルフィリンをキラリティーセンシング分子として利用できることがわかった。さらに興味深いことに、不斉有機酸を捕捉した状態で可視光を照射すると、記憶された不斉情報が完全に消失し、光をオフにすると、記憶が自発的によみがえる「不斉フォトクロミズム」を示すことを見いだした。
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