| Research Abstract |
腐植物質の各種生態系における役割の重要性について,近年,環境化学,水質化学等の分野で注目されている。腐植物質は芳香族系化合物の同族体からなる高分子物質の混合物であるため,研究代表者は平均的な組成,構造を理解する手法を提案してきた。シカシ,腐植物質を混合物のままで,平均化学構造を推定する手法には限界がある。研究代表者の開発した疎水性樹脂を用いる吸着クロマトグラフィーによって,腐植酸を,構造タイプの類似した成分(カルボキシル性成分,フェノール性成分,脂肪族性成分)に分別し,その化学構造を,NMR法とPy-MS法によるデータを基にコンピューター・モデリングによって明らかにしようとするものである。本年度の成果は以下の通りである。
1 腐植酸の成分組成が異なる代表的な土壌,黒ボク土壌,沖積水田土壌から,国際腐植物質学会の方法に従って腐植物質を抽出し,腐植酸を分離精製した。
2 疎水性樹脂XAD-8を用いた段階溶出吸着クロマトグラフィーによって,腐植酸を,カルボキシル性成分,フェノール性成分,準脂肪族性成分,脂肪族性成分の4成分に分別した。分析に必要な試料量を得るまで,超大型カラムを用いて,この分別処理を繰り返した。
3 各成分を凍結乾燥試料として得,元素分析,官能基分析(カルボキシル基,フェノール性水酸基ガルボニル基,アルコール性水酸基,メトキシル基),^1H-NMR分析を行った結果,いずれの腐植酸についても,カルボキシル性成分は芳香族性に富み,カルボキシル基,カルボニル基含量が多く,脂肪族性側鎖の長さは短い。脂肪属性成分は芳香属性が低く,長い脂肪族性側鎖を持つことが明らかとなった。
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