1998 Fiscal Year Annual Research Report
魚類寄生単生類の孵化幼生における宿主認識と着底機構
Project/Area Number |
09460083
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 和夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20092174)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
良永 知義 水産庁養殖研究所, 病理部, 室長(研究職)
|
Keywords | 単性類 / 寄生虫 / 孵化幼生 / 宿主特異性 / Heterobothrium okamotoi |
Research Abstract |
1. Neobenedenia girellae孵化幼生に対するヒラメ体表上皮抽出物中の着底誘導物質を硫安分画、陰イオン交換、ゲルろ過、レクチンアフィニティカラムを用いて精製を試みた。ゲルろ過後の活性フラクションを遠心分離したところ、活性は沈殿に存在しており、着底誘導物質はゲルろ過によって凝集変性することが示唆された。また、活性フラクションはレクチンカラムに保持されず、結果的に着底誘導物質の精製には至っていない。 2. Heterobothrium okamotoiの孵化幼生を用いた実験感染による宿主特異性の検討 (1) 孵化幼生を蛍光色素CFSEで染色する方法を考案した。孵化後1日以内の幼生と魚を3時間接触させることを標準感染法とした。これをトラフグに感染させたところ、幼生は宿主に着底する時点では、鰓と体表を区別していなかったが、体表に着底した幼生は、その後脱落したと考えられた。 (2) トラフグ、クサフグ、ヒラメ、マダイを用いて感染実験を行った。トラフグでは、鰓に着底した幼生のほとんどすべてが速やかに吸血を開始して成長したが、本来の宿主ではないクサフグ、ヒラメ、マダイでは着底できても、宿主血液の消化吸収能力が劣るか欠けているため脱落した。 3. Heterobothrium okamotoiの孵化幼生のトラフグ、ヒラメ、ブリの体表粘液に対するin vitro着底活性を調べた。その結果、トラフグ体表粘液抽出物に対する脱繊毛率、着底率はそれぞれ40%、20%であったのに対し、ヒラメ、ブリに対してはいずれも10%以下と有意に低い活性を示した。これらのことから、着底段階での宿主認識に、魚種による差があることが示された。 4. 宿主特異性発現には、孵化幼生の着底時の宿主認識能力、宿主からの栄養摂取能力、宿主の生体防御反応に対する抵抗性の有無などの関与が想定される。これらの能力はベネデニア亜科のはだむしと多後吸盤類のえらむしでは異なることが示唆され、単生類の宿主特異性は単一の要因で決定されるものではないと考えられた。
|