1999 Fiscal Year Annual Research Report
黒毛和種牛バンド3欠損症における致死性回避の分子機構
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09460145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 睦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00183179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松木 直章 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (40251417)
土井 邦雄 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (70155612)
高橋 迪雄 株式会社 味の素, 理事(研究職) (30011943)
高桑 雄一 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40113740)
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Keywords | 赤血球 / 膜蛋白質 / バンド3 / 遺伝性疾患 / 陰イオン輸送 / 酸塩基平衡 / 膜骨格 / 黒毛和種牛 |
Research Abstract |
1.新生子期の高致死率をもたらす膜病態の解明 (1)新たに、同じくR664X変異のホモ接合型で赤血球膜のバンド3を完全に欠損していながら、(a)スペクトリン、アクチンが著しく減少し、膜の物理的安定性が極度に低下している個体と、(b)スペクトリン、アクチン含量が正常で、膜安定性の低下がある個体とが存在することが判明した。膜骨格構成蛋白質の機能異常、脂質構成の異常の両面から解析を進めている。 (2)新生子期における赤血球の形態異常(Poikilocytosis、あるいはAcanthocytosis様)が膜脂質の過酸化によるものであるとの仮説を検証中である。 2.ヘテロ接合型個体における膜病態の解明 (1)無症候性ヘテロ赤血球の膜ではバンド3の部分欠損により膜骨格蛋白質にも減少が生じ、物理的安定性が極めて低下していること、即ち本疾患が常染色体性優性遺伝で、かつcombined band 3 deficiencyであることを明らかにした。 (2)ヘテロ接合型赤血球におけるバンド3の部分欠損は、膜骨格と連結されていないダイマー、連結されているテトラマー両者に生じている量的異常であることが明らかになった。 (3)へテロ接合型ではR664X変異mRNAがバンド3RNA総領の25-30%を占めること、正常バンド3とR664X変異バンド3が結合し得ること、カエル卵母細胞発現系における正常バンド3による陰イオン輸送がR664X変異バンド3の存在(量比1:0.25-1:4)で明確に阻害されること明らかにした。これらから、本疾患の原因遺伝子異常であるR664X変異が、正常バンド3の発現に対してドミナント・ネガティブに作用することが判明した。 (4)フィールドでのスクリーニング、遺伝子診断を実施し、遺伝コントロールを行い著効をあげた。 3.酸素・二酸化炭素交換の代償機構の解明 (1)ホモ接合型赤血球にみられるわずかな陰イオン輸送が赤血球系前駆細胞に発現し、本来は成熟赤血球には無いバンド3の構造類似体AE2によることを遺伝子解析で同定した。これ以外に代償作用を有する輸送系は認められなかった。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Matsumoto, M.、 他2名: "Molcular basis of bovine red cell protein 4.2 polymorphism in Japanese bkack cattle"Biochem. J.. 332. 183-187 (1998)
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[Publications] Bonkobara, M.、 他4名: "Proline, leucine, and alanine transport in placental microvillous membrane vesicles prepared from late gestational rats"J. Vet. Med. Sci.. 60. 1081-1085 (1998)
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[Publications] Nunomura, M.、 他5名: "Regulation of CD-44-protein 4.1 interaction by Ca and calmodulin -Implications for modulation of CD-44-ankynn interaction-"J. Biol. Chem.. 272. 30322-30328 (1997)
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[Publications] Uchide, T.、 他6名: "Utilization of intestinal triglyceride-rich lipoproteins in mammary gland of cows"J. Vet. Med. Sci.. 61. 1143-1146 (1999)
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[Publications] Sato, K.、 他6名: "Inherited defects of sodium-dependent glutamate transport mediated by glutamate/aspartate transporter in canine red cell due to a decreased level of transporter protein expression"J. Biol. Chem.. 275. 6620-6627 (2000)
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[Publications] 伴 顕、他10名: "黒毛和種牛のバンド3欠損症の遺伝学的コントロール"日獣会誌. 52. 85-89 (1999)
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[Publications] Inaba,M.: "Red blood cell membrane defects(Chapter 156) In Schalm's Veterinary Hematology, 5th ed. (Feldman, R. F., ZINKL, J. G., and Jain, N. C. eds) (in press)"Lippincott Williams and Wilkins,New York. 約1,000 (2000)
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[Publications] 高桑 雄一、稲葉 睦: "赤血球膜骨格 赤血球(監修 三輪史朗、編集 藤井寿一、高桑雄一)"医学書院、東京. 257 (1998)