神経系並びに循環系における新しい調節因子の機能と情報伝達に関する分子生物学的研究

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09470033
• Research Institution: The University of Tokushima
• Principal Investigator: 福井 清 徳島大学, 分子酵素学研究センター, 教授 (00175564)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 冨田 優美子 徳島大学, 分子酵素学研究センター, 助手 (00089913) ; 坂井 隆志 徳島大学, 分子酵素学研究センター, 助手 (80284321)
• Keywords: D-アミノ酸酸化酵素 / D-セリン / グリア細胞 / レニン結合蛋白質 / レニン・アンジオテンシン系 / 腎臓

Research Abstract

1.グリア細胞培養系におけるD-アミノ酸酸化酵素遺伝子の発現とD-アミノ酸添加の影響
D-アミノ酸酸化酵素(DAO)は細胞内のペルオキシゾームに局在するフラビン酵素で高等動物の腎臓、肝臓、脳などにその存在が明らかにされている。脳における意義としてDAOは、基質となるD-セリンの代謝によりその濃度を調節している可能性が示唆される。しかし、その詳細なメカニズムは不明であり、D-アミノ酸の代謝により細胞がどのような影響を受けるかも検討されていない。そこでラット初代培養アストロサイトおよびC6細胞(ラットグリオーマ)を用いてD-セリン添加後の細胞の変化を解析した。初代培養アストロサイトからDAOmRNAは、大脳皮質および小脳のどちらからも検出された。従来よりDAOの発現は小脳の方が大脳皮質より数倍高いことが知られており、このことは本研究による初代培養系による実験からも確認された。さらに種々のアミノ酸添加により初代培養細胞が障害を受け死に至ることが観察されたが、この現象は小脳由来のアストロサイトで顕著に認められ、かつD-セリンに依存的であった。またDAOを強制発現させたC6細胞ではより低濃度のD-セリンの添加によって細胞死が誘導された。
以上よりDAOの発現が比較的高い小脳由来のアストロサイトでD-セリンの添加により細胞死が誘導されること、またDAOを強制発現させたC6細胞ではより低濃度のD-セリンの添加により細胞死が誘導されることから、これらの細胞死はDAOによるD-セリン代謝の結果、引き起こされていることが示唆された。
2.マウスレニン結合蛋白質の組み換え体作成及び組織分布
レニン結合蛋白質(RnBP)はレニンと結合して高分子型レニンを形成しレニン活性を強く阻害すること、並びに血管内皮での発現が認められることから、組織レニン・アンジオテンシン系の新しい調節因子である可能性が示唆されている。
今年度、RnBP蛋白の機能を明らかにするため組み換えRnBP蛋白の作成とその腎臓における分布について調べた。
マウス腎臓RnBPcDNAをpET15b発現システムに組み込む発現ベクターを作成した。大腸菌株でIPTGによる発現誘導後、Histagを含む分子量約48KDaと推定されるRnBP蛋白の存在をウエスタンブッロトにより確認した。RnBPの腎臓での局在を検討する第一歩として、マウス腎臓切片でブタ腎臓高分子型レニン抗体を用いて免疫染色を行ったところ近位尿細管、緻密斑、細動脈、糸球体傍装置に反応陽性細胞を認めた。さらに抗RnBP抗体、抗レニン抗体を用いてRnBPの組織分布の詳細を検討して、RnBPの生理的意義解明のてがかりとしたい。

Research Products

• [Publications] Raibekas,A.A.: "Design and Properties of Human D-Amino Acid Oxidase with Covalently Attached Flavin"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 97(印刷中). (2000)
• [Publications] Shimizu,Y: "NBP1 (Nap1 Binding Protein 1),an essential gene for G2/M transition of Saccharomyces cerevisiae,encodes a protein of distinct sub-nuclear localization."Gene. 245(印刷中). (2000)
• [Publications] Yuasa,C: "Oral Administration of Sepimostat Mesilate Prevents Acture Alcohol Pancreatic Injury in Rats"J.Pharm.Pharmacol. 51. 867-871 (1999)
• [Publications] Jinnouchi,O: "Glutamatergic Neurotransmission in the Inner Ear."耳鼻臨床. 補101. 1-6 (1999)
• [Publications] 宍戸 裕二: "グリア細胞培養系におけるD-アミノ酸酸化酵素遺伝子の発現とD-アミノ酸添加の影響"ビタミン. 74(印刷中). (2000)
• [Publications] 三宅 可浩: "タンパク質化学第4巻酵素オキシドレダクターゼ"矢島 浩明 編(広川書店). 353 (2000)
• [Publications] Kanamori,T: "Flavins & Flavoproteins"Ghisla,S.et al eds (Rudolf Weber). 939 (1999)