1998 Fiscal Year Annual Research Report
p53遺伝子欠損マウスでの脳腫瘍発生とその遺伝子解析
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09470061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 隆俊 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30085633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 秀明 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (40214142)
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Keywords | p53欠損 / ノックアウトマウス / 脳腫瘍 / 経胎盤発癌 / schwannoma / neu遺伝子、活性化 / エチルニトロソウレア / DNA損傷 |
Research Abstract |
我々はp53遺伝子欠損マウスに化学発癌物質エチルニトロソウレア(ENU)を用いた経胎盤発癌実験を行い、マウス脳腫瘍の系を確立した。我々の樹立したマウス脳腫瘍の系ではいずれの腫瘍もp53wildtypeアレルが存在しないという条件下で脳腫瘍が発生している。今年度はこの脳腫瘍発生に関わるメカニズムに注目して研究を行った。まず、胎生12,5日にENUを妊娠雌マウスに投与した際に胎児にいかなる変化が見られるかを組織学的に検索した。この結果、野生型胎児マウスでは前脳部分に限局して、アポトーシスを示す細胞が多数認められたのに対し、ホモ胎児マウスではこのアポトーシスが全く認められなかった。この組織学的検索を確認するためにTUNNEL法を用いて検索した。アポトーシスを示す細胞は野生型胎児マウスの前脳部分に限局して認められ、ヘテロマウスではその程度が軽く、ホモマウスではアポトーシスが全く認められないことが判明した。このアポトーシスはENU投与後4時間から観察され16時間でピークに達した。ホモマウスでは96時間まで観察したがアポトーシスは認められなかった。この結果からENUによりDNA障害を受けた細胞はp53依存性にアポトーシスにより排除され、p53の存在しない条件下では障害を受けた細胞の排除が行われず、ここから腫瘍が発生することが考えられた。マウスの発生段階と脳における細胞分裂の関係を考えると12.5日では大脳のグリアが盛んに増殖している時期に当たり、脳腫瘍の発生と細胞増殖およびアポトーシスの関連が示唆された。この仮説を確認するため、小脳の外顆粒層が増殖している生後1日目の新生児マウスにENUを投与した。p53依存性アポトーシスは小脳の外顆粒層に限局して認められた。そして、2ヶ月の観察の結果、小脳腫瘍であるmedulloblasromaが60%に生じたのである。以上の結果からp53依存性のアポトーシスと発生段階における細胞増殖が脳腫瘍発生の部位と組織型を規定する重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Oda,H Ishikawa,T.et al.: "Loss of p53 is an early event induction of brain tumors in mice by transplacental carcinogen exposure." Cancer Res.57. 646-650 (1997)
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[Publications] Y,Imai.,T,Ishikawa.et al.: "p16^<INK4> Gene mutations are relatively frequent in ampullary carcionomas." Jpn.J.Cancer Res. 88. 941-946 (1997)
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[Publications] H,Oda.,T,Ishikawa.et al.: "Loss of Imprinting of IGF2 in Renal-Cell Carcinomas." Int.J.Cancer. 75. 343-346 (1998)
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[Publications] H,Kawate.,M,Sekiguchi.et al.: "Separation of killing and tumorigenic effects of an alkylating agent in mice defective in two of the DNA repair genes." Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 95. 5116-5120 (1998)
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[Publications] H.Honda.,H.Hirai.et al.: "Cardiovascular anomaly,impaired actin bundling and resistance to Src-induced transformation on mice lacking p130^<Cas>." Nature Genetics. 19. 361-365 (1998)