1998 Fiscal Year Annual Research Report
実験レーシュマニア症の治癒、非治癒機転における急性炎症関連分子の関与
Project/Area Number |
09470069
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
仙道 富士郎 山形大学, 医学部, 教授 (80091833)
|
Keywords | 実験レーシュマニア症 / Leishmania major / 好中球 / 急性炎症関連分子 / ケモカイン / mRNA expression |
Research Abstract |
実験レーシュマニア症の治癒と致死的増殖の振り分けの機序としては、ヘルパーT細胞亜群の関与が提唱され、Th1細胞は治癒に、Th2細胞は致死的増殖に重要であるとされた。しかし、検索が進むにつれ、この様式には適合しない多くの結果が得られ、現在なお混沌としている。筆者らは、以上の機序の一つの因子として、これまで寄生虫感染症の発症機序ではほとんど考慮されてこなかった好中球産生急性炎症関連分子に注目し、その役割を検討することを本研究の大目的とした。マウス好中球を選択的に枯渇させる単クローン抗体、Gr-1を前投与したC57BL/6(治癒系)とBALB/c(非治癒系)マウスにLeishmania majorを皮下摂取し、腫瘤の増殖態度、免疫関連サイトカインやメッセージ(mRNA)発現に及ぼす好中球の役割について検討した。その結果、1) 非治癒系のBALB/cマウスでは、マウスimmunoglobulinを投与したコントロール群に比べて、好中球枯渇群の腫瘤増殖が有意にそくしんされた。これに対して、2) 治癒系のC57BL/6マウスでは、両者の腫瘤増殖に差異は認められなかった。3) レーシュマニア感染後2週目の非治癒系のBALB/cマウスでは、膝下リンパ節におけるIFN-γとTNF-αのmRNA発現量は、好中球枯渇群がコントロール群に比べて、いずれも低下していた。以上の結果から、非治癒系のレーシュマニア感受性BALB/cマウスでは、好中球が腫瘤の増殖を抑制していることが明らかになった。さらに好中球によるこの抑制反応系のeffector moleculeとしてはIFN-γとTNF-αが考えられ、この両者のサイトカイン産生を好中球が修飾している可能性が示唆された。今後は、サイトカインmRNA発現についてより詳細に、更にサイトカイン産生量の変動についても検討を加え、レーシュマニア感染免疫における好中球の役割を明らかにする予定である。
|