1997 Fiscal Year Annual Research Report
環境因子によるヒト遺伝子損傷機構の解明およびがんの化学予防
Project/Area Number |
09470101
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
川西 正祐 三重大学, 医学部, 教授 (10025637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 成人 三重大学, 医学部, 助手 (40263024)
村田 真理子 三重大学, 医学部, 講師 (10171141)
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Keywords | 炎症 / NO / DNA損傷 / スーパーオキシド / ニッケル化合物 / Amesテスト陰性 / 環境化学物質 / がんの化学予防 |
Research Abstract |
本研究の目的は、環境因子による直接的なDNA損傷に加えて、炎症時に単球や好中球などが生成する一酸化窒素(NO)や活性酸素によるDNA損傷について解析し、環境発がんにおける炎症の役割を解明することである。本研究において以下の諸点を明らかにした。 (1)NO、スーパーオキシド(O_2^-)同時発生試薬では細胞内の酸化的DNA損傷(8-OH-dG)が増大したが、NO発生試薬だけでは変化しなかった。種々の発がん性ニッケル化合物は好中球および活性化マクロファージからのO_2^-、NO生成を促進した。発がん性ニッケル化合物で活性化したマクロファージより生成したNOを暴露した細胞内で8-OH-dG生成が増加した。単離DNAを用いた実験では、NO発生試薬とO_2^-発生系の共存下においてDNAは酸化的に損傷され、8-OH-dGが生成した。(2)発がん性が指摘されているAmesテスト陰性の環境化学物質(パラジクロロベンゼン)や食品添加物(ジブチルヒドロキシトルエン)では、それらの代謝物が金属や生体内還元物質の存在下において活性酸素を生成しDNAを損傷した。紫外線が生体内物質との相互作用により塩基特異的な酸化的DNA損傷をもたらすことを明らかにした。(3)酸化的ストレスの防御作用を有するビタミンAやビタミンEなどの抗酸化剤はアンチオキシダント作用と同時にその逆の作用であるプロオキシダント作用も有することを示めし、抗酸化剤が抗発がんのみならず発がんにも関与することが示唆された。以上の実験結果から、環境因子による発がん機構には直接的な酸化的ストレスによるDNA損傷と炎症細胞を介した間接的なDNA損傷が関与していることが明らかになった。がんの化学予防を有効に進めるための更なる衛生学的研究を行なうことが必要である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] S.Kawanishi, et al: "Photoinduced Hydroxylation of Deoxyguanosine in DNA by Pterins:Sequence Specificity and Mechanism" Biochemistry. 36. 1774-1781 (1997)
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[Publications] S.Kawanishi, et al.: "Site-specific DNA Damage Induced by UVA Radiation in the Presence of Endogenous Photosensitizer." Biological Chemistry. 378. 1307-1312 (1997)
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[Publications] S.Kawanishi, et al: "Superoxide Formation and DNA Damage Induced by a Fragrant Furanone in the Presence of Copper(II)." Mutation Res.(in press). (1998)
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[Publications] S.Kawanishi, et al: "Metal-mediated Oxidative DNA Damage Induced by Nitro-2-aminophenols." Cancer Letter. (in press). (1998)
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[Publications] S.Kawanishi, et al: "Oxidative DNA Damage and Apoptosis Induced by Metabolites of Butylated Hydroxytoluene." Biochemical Pharmacology. (in press). (1998)
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[Publications] 川西正祐,他: "活性酸素とNOによるDNA損傷" 生化学. 69・8. 1014-1017 (1997)