1998 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルス持続感染に起因する慢性肝疾患対策樹立に関する調査・研究-血清学的・遺伝子学的解析-
Project/Area Number |
09470115
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
吉澤 浩司 広島大学, 医学部, 教授 (30109954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守屋 尚 広島大学, 医学部, 講師 (40243563)
中西 敏夫 広島大学, 医学部附属病院, 助教授 (20136089)
田中 純子 広島大学, 医学部, 講師 (70155266)
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Keywords | HCVキャリア / HCV抗体陽性率 / HCVスクリーニング / 肝がん肝炎検診 |
Research Abstract |
平成9年度は、1.一般健常者集団内に潜在するHCV持続感染者数の推計、2.一般健常者集団内に潜在するHCV持続感染者の病態解析を行った。平成10年度は、下記の項目について調査・研究を実施し、総括した。 1. 一般健常者集団内に潜在するHCV持続感染者の病態の経時的変化の解析 献血時に発見されたHCVキャリアのうち、'93年と97年の時点における診断が確定している211例について集計を行った。'93年の時点で慢性肝炎と診断された154症例の中から、4年の経過で肝細胞癌へと進展した2例(1.3%)、肝硬変へと進展した4例(2.6%)が見出された。また、血液生化学的検査、画像診断により、異常なしと診断された54症例中16例(29.6%)が慢性肝炎へと病期が進展していた。つぎに、献血を契機に発見されたHCVキャリア218例のウイルス量(core proteinの定量による)の分布を解析した。HCV genotypeがII/1bである群はHCVウイルス量の値が広い範囲に分布しているが、III/2aの群ではやや低い値に、IV/2bの群では高い値に分布する傾向が認められる。なお、この成績は、HCVキャリア群の中に占めるインターフェロン治療の適用例の比率を算出するための基礎的資料となる。 2. 保存血清を用いた、高度浸淫HCV感染状態の解析 '92年から'97年までに県内17市町村(HCV感染の高度浸淫地区)において受診した40歳以上の住民10,754人(延べ18,096人)を対象に、出生年別・性別のHCV抗体陽性率及び高力価占有率の集計を行った。HCV抗体陽性率は、全体では10.1%(9.5〜10.7%)であり、このうちの約4分の3はHCV抗体力価2^<13>PHA価以上の高力価を示す(高力価占有率:74.2%)HCVキャリアであった。出生年別に解析をした結果、これまで、献血者から得られる資料からは知ることができなかった70歳以上の年齢層においてもHCV抗体陽性率は高い値を示していることが明らかとなった。また、HCV抗体陽性者中に占める高力価占有率は、40歳以上の年齢層では7割を超え、特に男性の高年齢層では抗体陽性者中に占めるHCVキャリアが多いことが注目された。 3. HCVキャリアを確実に発見するための検査法の確立 以上の結果をもとに、ほぼ100%のHCVキャリアを捉えることを実証した、簡便、かつ安価な検査方式を確立し、肝細胞がんの好発年齢に近づく40歳以上の地域住民を対象とした肝がん、肝炎検診の基本検査に取り入れていくことを提言した。
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[Publications] K.Hino: "Mother-to-infant transmission occurs more frequently with GB virus C than hepatitis C virus" Archives of Virology. 143. 65-72 (1998)
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[Publications] 吉澤浩司: "原因論に基づいた肝がん対策の提言" 日本がん予防研究会. 18. 10-12 (1998)
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[Publications] 守屋尚: "献血者スクリーニングの成績" 総合臨床. 47(7). 2074-2079 (1998)
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[Publications] 舛田一成: "献血を契機に発見されたHCVキャリアの自然史-初診時慢性肝炎と診断され、5年の経過で肝発癌をみた2例-" 広島医学. 51(12). 1451-1453 (1998)
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[Publications] 前久保 博士: "GOR抗体測定系-ルミノマスター「GOR」-の臨床的有用性-特にC型慢性肝炎インターフェロン治療例に関する検討-" 臨床と研究. 75(7). 1637-1642 (1998)
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[Publications] 田中純子: "肝炎ウイルス持続感染と慢性肝疾患死亡との関連-死亡小票に基づいた調査-" 厚生の指標. 45(10). 8-12 (1998)
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[Publications] 田中純子: "地域住民健診からみた高年齢層におけるHCV陽性率" 広島医学. 51(12). 1446-1450 (1998)
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[Publications] 土田貴彦: "EIA法およびPHA法によるHCV抗体の検出とHCV-RNAの存在" 臨床検査機器・試薬. 21(4). 335-338 (1998)
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[Publications] 守屋尚: "疫学ハンドブック" 南光堂, 374 (1998)
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[Publications] H.Yoshizawa: "Hepatitis C Virus" KARGER, 270 (1998)
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[Publications] 吉澤浩司: "ウイルス肝炎-診断・予防・治療のてびき" 文光堂, 75 (1998)