Research Abstract |
本年度の研究は,(1)健診受診者の受診情報と医療費の関連を検討し,医療費への効果を含む健診事業実施効果の評価を試みる,(2)母子保健法に基づく健診事業については,市町村の母子管理票を解析し,3ヶ月〜3歳児の定期健診受診状況と医療費との関連を分析する,である. (1)健診受信者の受療行動 3市の事業所における35歳以上約5,800人の政府管掌健康保険被保険者個人の平成11年度健診受診データ,同年度に行った生活習慣に関する問診票,及び同年度の1年間のレセプトをデータベース化し,レセプトの病名欄が生活習慣病のものについて,生活習慣・受診等の保健行動と医療費との関連を分析した.その結果,糖尿病の受療者で,医師から通院が必要と言われなかった者は,脂質・糖質・塩分摂取のいずれも,高摂取群が低摂取群よりも医療費が高い傾向が見られたが,通院が必要と言われた者は,高摂取群は低摂取群よりも医療費が低かった.同様の傾向は,循環器疾患,高血圧受療者についても見られた.このことは,糖尿病等の生活習慣病に関して,羅患〜軽症の段階においては,適切な食習慣が医療費の軽減につながることを示すとともに,症状が進行し通院が必要な段階では,医師による食習慣の改善という二次予防効果があったと考えられる. (2)母子保健法に基づく健診事業 神奈川県愛川町が掌握している平成元年〜5年の母子管理票及び,当該年度の国保レセプト約2,500件のデータベース化により,健診結果とその後の保健・受療状況との関連を分析した.3ヶ月児健診の結果,異常群は正常群よりもその後の受療点数が有意に高かった.この関連は,異常群がその後正常と判定されても見られた.また,3ヶ月〜3歳児定期健診において異常判定回数が多いほど,その後の受療点数が高い傾向が見られた.このことは,異常ありの判定により,保健・医療機関への受療行動が促進されたと考えられる.
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