1997 Fiscal Year Annual Research Report
アルコールの生体中毒作用機序に関する分子生物学的研究
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09470124
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福井 有公 京都大学, 医学研究科, 教授 (10025588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 博志 京都大学, 医学研究科, 助手 (60263092)
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Keywords | アルコール / 転写制御因子 / 情報伝達系 / サイトクローム P450 2E1 |
Research Abstract |
この研究では、転写因子の一つであるNF-κB系に着目して、エタノールのおよぼす急性期の生体反応をWistar系雄ラットを用いた潅流肝にて検討し、さらに潅流液組成の変化によりその機序を考察した。潅流安定後にKHS潅流液にethanol(10mM,50mM,100mM),50mM ethanol+diallyl sulide(DAS),CCl_4をそれぞれ付加した。NF-κBのDNA binding site として知られている配列に結合するoligonucleotideから^<32>Pでラベルしたプローブを作成し、潅流肝から分画した核画分と反応させた。反応物をnon-denatured PAGEにて分離した後、autoradiographyを行ってプローブと結合したNF-κBを検出した。潅流20分以降では、すべてのethanol群とCCl_4群において検出可能であり、ethanol群内においては、潅流濃度依存性に検出量は増加した。潅流60分後にはethanol+DAS群においても検出された。Control群ではいずれの潅流時間においても検出されなかった。以上の結果よりethanolの急性の作用としてNF-κBの活性化が認められた。EthanalのNF-κBの活性化の機序としては、redoxの変化、TNF受容体を介した伝達系の活性、radicalの産生、IκB系の分解等が考えられる。このうちTNF受容体を介した伝達系の活性化に関してはこの研究では一回潅流法を用いているため、受容体そのものについての影響は除外される。またethanal投与時のradicalの発生に関しては以前よりcytochrome P 450 2E1(2E1)を介する代謝系の関与が指摘されており、この研究においてはDAS(2E1阻害剤)の付加によってこの関与を消去できる実験群を設定し、NF-κBの活性化の抑制が認められている。したがってethanolによるNF-κBの活性化は代謝系によるredox系の変化あるいはIκB系の分解による可能性が示唆され、現在これらの系について検討中である。
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