1998 Fiscal Year Annual Research Report
アルコールの生体中毒作用機序に関する分子生物学的研究
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09470124
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福井 有公 京都大学, 医学研究科, 教授 (10025588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 博志 京都大学, 医学研究科, 助手 (60263092)
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Keywords | アルコール / 転写制御因子 / 酸化的DNA損傷 / チトクロームP450 2E1 |
Research Abstract |
この研究では、DNAの酸化的損傷と転写制御因子に着目して、エタノール(EtOH)投与時の急性作用をWistar系雄ラットを用いて検討した。DNAの酸化的損傷に関する検討では、In vivoのEtOH投与実験を行った。肝臓内の8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OH-dG)を液体クロマトグラフィーの電気化学検出器で同定し、その値をDNAの酸化的損傷の指標とした。3.5および5g/kgのEtOH投与後2時間で8-OH-dG量はcontrol群に比し有意に増加した後減じた。Cytochrome P450 2Elの阻害剤であるDASとPICを前処置をすることによりこの有意な上昇が消去された。したがってEtOHによる8-OH-dGの産生機序にCYP2Elが関与している可能性が高いことが判明した。一方転写制御因子に関しては、ラット肝臓を用いた灌流実験を行った。灌流後、nuclear画分とcytosol画分に分画した。Nuclear画分についてはRIでラベルしたoligonucleotideを作成し、non-denaturedPAGEにて転写制御囚子NF一κBのDNA結合活性を検出した。Cytosol画分についてはwestern blottingにて抗IκB抗体を用いてIκBを検出した。50mM EtOH灌流群についてはDNA結合活性が灌流20分で最大に達した後減少した。代謝阻害剤である4-methlpyrazoleおよびdiallyl sulfide付加群では50mM EtOH灌流20分での上昇は認められなかった。どちらの阻害剤ともにcytochrome P450 2Elを阻害することから、灌流20分におけるNF-κBの上昇にはcytochrome P450 2Elを介する代謝系が関与していることが判明した。以上のことから、EtOHの急性作用には、cytochrome P450 2Elを介する代謝系が大きく関与することが示唆された。
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