1998 Fiscal Year Annual Research Report
一酸化炭素による肝微小循環制御と胆汁分泌調節の分子機構の解明
Project/Area Number |
09470143
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
末松 誠 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (00206385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 良之 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10276214)
石村 巽 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40025599)
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Keywords | heme oxygenase / 一酸化炭素 / 一酸化窒素 / cytochrome P450 / 伊東細胞 / guanylate cyclase / カルシウム / 肝細胞 |
Research Abstract |
平成10年度の本研究ではCOが肝臓における胆汁酸依存性胆汁輸送の内因性抑制物質であることを明らかにすると同時に、そのメカニズムとして同じガス状物質であるNOのようにミトコンドリアの呼吸鎖の抑制には直接関係せず、胆汁分泌系の起始部である毛細胆管の律動的収縮運動に対する抑制効果が関与すること、その場合COのレセプター分子としてcytochrome P450epoxygenaseが関与し、細胞内カルシウムの動員抑制が抑制効果の事態であることを明らかにした。この結果はCOの新しい情報伝達系が提示された意義とともに、従来情報伝達系と考えられてきたsoluble guanylate cyclaseを介さない経路が存在することを示唆している点で極めて重要な成績である。一方COの生成酵素であるheme oxygenaseのアイソザイム(HO-1,HO-2)の肝臓における分布は全く明らかにされていなかったが、前者が、類洞内に分布するKupffer cellに、後者が類洞外の肝実質細胞に分布することが新規に作成した単クローン抗体による免疫組織学的検討で明らかにされ、類洞外空間(HO-2)で生成されたCOが血管周皮細胞である伊東細胞を弛緩させて血管抵抗が恒常的に低く保たれることが示された。また我々が作成した抗体は、ヒトHO-1抗原にも交叉反応を有しており、現在正常および門脈血行異常症例での組織学的検討を続行中である。研究対象として特にidiopathic portal hypertension (IPH)に着目し、本症の数例の肝生検、摘出脾臓標本の検索を進めた結果、肝臓のKupffercellの密度には変化がないのにもかかわらず、HO-1の発現が著しく低下している一方、脾臓ではHO-1発現が上昇していることが示されつつある。また同様の結果は肝硬変症では認められずむしろKupffercellのみならず肝実質細胞での発現が上昇していた。IPHに見られるこのような変化は内因性弛緩因子の低下による類洞血流不全の機序として重要な意味を持つ可能性がある。また本症における血球系のturnoverの異常が単なる門脈圧増加による脾機能上昇によるものではなく、ヘム代謝コンパートメントと鉄回転の異常を背景として起きている可能性を示唆するものとして注目できる。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] Suzuki,H.,et al: "Xanthine oxidase activity Associated with arterial blood pressure in spontaneously hypertensive rats." Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 95. 4754-4759 (1998)
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[Publications] Shinoda,Y.,et al: "Carbon monoxide as a modulator of bile canalicular contractility in cultured rat hepatocytes." Hepatology. 28. 286-295 (1998)
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[Publications] Morikawa,N.,et al: "Discontinuous total parenteral nutrition attenuates postischemic mitochondrial dysfunction in rat liver." Hepatology. 28. 1289-1299 (1998)
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[Publications] 末松 誠 他: "ヘムオキシゲナーゼ/一酸化炭素系による臓器機能制御機構" 血管. 21 (1). 19-25 (1998)
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[Publications] 末松 誠 他: "ヘムオキシゲナーゼ:CO系による臓器機能制御" 細胞工学. 17 (2). 224-229 (1998)
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[Publications] 末松 誠 他: "一酸化炭素による微小血管機能の制御:肝臓におけるin vivo/in vitroのdiscrepancy." 細胞培養工学. 24 (1). 19-23 (1998)
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[Publications] 末松 誠 他: "人口酸素運搬体と微小循環機能" 医学のあゆみ. 184(10). 821-825 (1998)
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[Publications] 末松 誠 他: "Kupffer細胞と肝微小循環:ヘム代謝と血流調節の接点" 病理と臨床. 16(9). 1089-1094 (1998)
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[Publications] Suzuki,H.,et al: "Paracrine upregulation of VEGF receptor mRNA in endothelial cells by hypoxia-exposed Hep G2 cells." Am.J.Physiol.(Gastrointest.Liver Physiol.). 276. G92-G97 (1999)
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[Publications] Mori,M.,et al: "Carbon monoxide-mediated alterations in paracellular permeability and vesicular transport in acetaminophen-treated perfused rat liver." Hepatology. (in press). (1999)