1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09470178
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
布井 博幸 熊本大学, 医学部, 助教授 (50218260)
|
Keywords | gp91-phox / レトロウイルス・ベクター / Ha-MDR-IRES-gp91 / PA317 / MFGS-gp91 / 293SPA |
Research Abstract |
私は、1995年から慢性肉芽腫症患者の遺伝子治療の妥当性について統計学的に検討し、また遺伝子治療用のベクターを作成し、患者細胞を用いた検討を重ね、臨床応用を考えた具体的なプロトコール作成を検討した。 日本では220名以上の慢性肉芽腫症の患者が登録され、25万人出生あたり1名の発生頻度であり、地域集積はなく、平均寿命は25歳から30歳で、死因は主にアスペルギルス肺感染症と耐性菌による肺炎・敗血症であることが明らかになった。病型分類ではgp91-,p22-,p47,p67-phox欠損患者の割合は各々77%、7%、6%、10%であった。同疾患に対する骨髄移植は1994年までに世界で10例程度のしか行われておらず、他の免疫不全での移植に比較すると、同胞間での骨髄移植ではある程度の成果を納めているが、非血縁者間での移植の成績はかなり厳しいものと思われた。 1997年から日本でも本格的な骨髄移植が同疾患でもなされるようになり、現在日本国内で7例の造血幹細胞移植が行われており、5例が無事生着し、1例がGVHDで死亡、1例が生着不全で死亡している。 今後さらに造血幹細胞移植技術が進歩すると考えられるが、同疾患に対する遺伝子治療の必要性がさらに確認された。 また、遺伝子治療の基礎的検討として、p47-,p67-phox遺伝子治療用ベクターを開発した(論文)。同時に、同疾患の中でも最も多いgp91-phox欠損患者の遺伝子治療の可能性について以下の様な詳細な検討を行った。PHa-MDR-IRES-gp91とMFGS-gp91 retrovirus vectorを用いて、患者樹立B細胞株および造血患者幹細胞に遺伝子導入を行い、蛋白の発現、化学発光およびFACS解析による活性の再構築を確認した(日本遺伝子治療学会報告予定)。また同様の事を日本の数名の患者でも確認できる手はずを整えた。これらの結果より、来年度にも学内の倫理委員会に慢性肉芽腫症遺伝子治療のプロトコールを提出する予定である。
|
-
[Publications] Iwata,M.: "Drug-selected complete restoration of superoxide generation in Epstein-Barr virus-transformed B cells from p47 phox-deficient chronic granulomatous disease patients by using a bicistronic retrovirus vector encoding a human multi-drug restance(MDRI)and the p47 phox gene." Hum Genet. 103. 419-423 (1998)
-
[Publications] 布井博幸: "慢性肉芽腫症遺伝子治療の基礎的研究" 小児感染免疫. 10. 125-129 (1998)
-
[Publications] 笹田昌孝: "好中球-機能低下と機能亢進 慢性肉芽腫症" 医薬ジャーナル, 242 (1998)