Research Abstract |
(1)我が国における赤血球膜異常症の特質に関する研究: 先天性溶血について研究を行った(Blood 90 : 5a,1997 ; Blood90 : 8b,1997)。特に,本年度は遺伝性球状赤血球症(HS)に焦点を絞り、HS37系92例および正常対照34例について,赤血球膜蛋白分析,当該膜蛋白の遺伝子解析を行った。その結果,欧米諸国において本症の主要病因であるankyrin(Ank)欠損は,わが国のHSでは膜蛋白レベルで8%にすぎず,この成績はAnk遺伝子解析によっても確認された。すなわち,Ank遺伝子では12種の塩基変異を検出したが,2例を除いて全アミノ酸変異を伴わないsilent mutationであることが判明した。 これに対して,わが国のHSでは,膜蛋白レベルで,band3(B3)欠損を30%に,protein4.2(P4.2)欠損を30%に認めた。事実,B3遺伝子解析では,病因遺伝子としてframeshift mutation 3種,missense mutation 5種,さらにpolymorphism 7種(missense mutation 4種,silent mutation 1種,intron内変異 2種)を見出した。以上の成績から,わが国のHSの病因は,B3遺伝子異常が主体であるのに対して,病因としてのAnk遺伝子異常は極めて稀であることを明らかにしえた(Brit J Haematol 99:522-530,1997;Blood 90:6b-7b,1997)。 (II)膜蛋白関連遺伝子の発現とそのmethylationの研究: 赤芽球における膜蛋白関連遺伝子,特に,β-spectrin(β-SP),band3(B3),protein4.2(P4,2)を中心に,そのpromoter領域のmethylationと機能発現について研究を開始し,現在鋭意継続中である。この場合,B3およびP4.2遺伝子が5′-CG-3′sitesが強くmethylatedであるのに対して,β-SP遺伝子はほとんどまったくunmethylatedであることが特異であり,その意義について検索中である(Blood 90:8b,1997;Exp Hematol in press,1998)。 (III)Allele 4.1(-)Madridにおける電顕的研究: 赤血球膜構築in situに関する電顕的検索を行い,その病態的意義を明らかにした(Blood 90:2471-2481,1997)。
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