1997 Fiscal Year Annual Research Report
外科的ストレスに対するレドックス制御機構解析とその治療応用
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09470272
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Research Institution | Tazuke Kofukai Medical Research Institute |
Principal Investigator |
高林 有道 財団法人田附興風会, 医学研究所・第2研究部, 研究主幹 (00226911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薄井 裕治 財団法人田附興風会, 医学研究所・第3研究部, 研究員 (70260164)
中村 肇 京都大学, 医学研究科ポスドク, リサーチアソシエート
増谷 弘 京都大学, ウイルス研究所, 助手 (50252523)
岩田 辰吾 財団法人田附興風会, 医学研究所・第3研究部, 研究員 (80291904)
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Keywords | グルタチオン / チオレドキシン / レドックス / 外科的ストレス / アポトーシス / 抗癌剤 |
Research Abstract |
グルタチオンやチオレドキシンをはじめとする細胞内チオールによるレドックス制御機構が、アポトーシス、抗癌剤耐性、手術侵襲を含めた外科的ストレスに対する生体応答の分子機構にどのように関与しているかを解析することを目的として以下の検討を行った。 1)チオール酸化剤ダイアマイドによりヒトT細胞株Jurkat細胞にアポトーシスを誘導した際、細胞内では活性酸素の産生が増加し、mitochondriaからcytochrome Cが細胞質へ放出され、caspase-3(CPP32)の活性化がおこることを明らかにした。さらにこのcaspase-3の活性化にはグルタチオンやチオレドキシンによる還元環境が必要であることを明らかにし、アポトーシスの制御に細胞内のレドックス環境が深く関与していることが示唆された。 2)我々はこれまでにチオレドキシン遺伝子導入細胞がシスプラチンなどの抗癌剤に耐性を示すことを報告してきたが、今回シスプラチンがチオレドキシン還元酵素の活性を阻害すること、シスプラチン耐性細胞株ではチオレドキシン還元酵素が誘導されることを明らかにし、抗癌剤耐性にチオレドキシン系が深く関与していることが明らかとなった。 3)我々はこれまでに血漿中チオレドキシン値がHIV感染症などの酸化ストレスで上昇することを報告してきたが、このたびグルタチオン依存性還元酵素であるグルタレドキシンがヒト血漿中に存在することを証明し、ELISA法によるその測定系を確立した。外科的ストレスのひとつとして人工心肺を伴う開心術における虚血再環流障害をとりあげ、血漿中チオレドキシンおよびグルタレドキシン値を測定した。虚血再環流障害により血漿中に酸化型チオレドキシンが増加することを明らかにした。血漿チオレドキシン値の測定は外科的ストレスの新しいモニターリングシステムとなると考えられる。
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[Publications] Tetsuro Sasada, Arimichi Takabayashi, Junji Yodoi etal: "Redox control of resistance to cis-diamminedichloroplatinum (II) (CDDP) : protective effect of human thioredoxin against CDDP-induced cytotoxicity." J.Clin.Invest.97. 2268-2276 (1996)
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[Publications] Hajime Nakamura, Junji Yodoi, etal: "Elevation of plasma thioredoxin levels in HIV-infected individuals." Int.Immunol.8. 603-611 (1996)
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[Publications] R.Minakawa, H.Nakamura, J.Yodoi, B.Lindholm etal: "Expression of ATL-derived factor/human thioredoxin in rejected kidney grafts." Transplant Proc.28. 1463-1464 (1996)
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[Publications] Hajime Nakamura, Kazuhiro Nakamura, Junji Yodoi: "Redox regulation of cellular activation." Annu.Rev.Immunol.15. 351-369 (1997)
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[Publications] Medelon M.Maurice, Hajime Nakamura, etal: "Evidence for thr role of an altered redox state in hyporesponsiveness of synovial T cells in rheumatoid arthristis." J.Immunol.158. 1458-1465 (1997)
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[Publications] Hajime Nakamura, Jarle Vaage, Guro Valen, CAlicia Podilla, etal: "Measurements of plasma glutaredoxin and thioredoxin in healthy volunteers and during open-heart surgery." Free Rad.Biol.Med.(in press). (1998)