1998 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能の工学的制御の研究:不随意運動症の脳深部刺激療法を中心に
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09470302
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
片山 容一 日本大学, 医学部, 教授 (00125048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越永 守道 日本大学, 医学部, 助手 (30267067)
川又 達朗 日本大学, 医学部, 助手 (20234122)
平山 晃康 日本大学, 医学部, 講師 (10189871)
山本 隆充 日本大学, 医学部, 講師 (50158284)
関根 好文 日本大学, 理工学部, 教授 (90059965)
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Keywords | 不随意運動 / 脳深部刺激療法 / 視床下核 |
Research Abstract |
[目的]パーキンソン病の振戦に対しては視床腹側中間核(Vim核)刺激でほぼ完全に症状を改善させることが可能となった。また固縮、すくみ足に対しては淡蒼球内節(GPi)刺激が有効であるが、無動に対しては十分な効果が得られていない。そこで、振戦、固縮に加えて無動の治療についての可能性が報告されている視床下核(STN)の慢性刺激療法について検討した。 [方法] 対象は固縮、無動を主症状とするパーキンソン病6例で、片側刺激を4例、両側刺激を2例に施行した。またocrtiocbasal degeneration(CBD),progressive supranuclear palsy(PSP)に対する効果との比較を行った。手術にはLeksellの定位脳手術装置を用い、schaltenbrand and wahrenのアトラスならびに術中のニューロン活動の変化を指標として目標点を決定した。刺激電極、受信器ならびに送信器はメドトロニック社製脳深部刺激装置(X-trel systemまたはMatrix system)を用い、手術の効果判定にはUnified Parkinsons Disease Rating Scale(UPDRS)ならびにHoehn-Yahr重症度評価法を用いた。 [結果と考察]固縮ならびに無動を主症状とするパーキンソン病において、1側の固縮が著明なものに対しては対側のSTN刺激、無動が著明な症例に対しては両側STN刺激を施行した。またCBD 1例、PSP 1例も同様に選択し、CBDには1側のSTN刺激、PSPには両側STN刺激を施行した。術中の刺激部位の決定にはニューロン活動の記録が有用で、電極のSTN内への刺入によって振幅の著しい増加ならびに放電頻度の増加を認めた。また、低頻度刺激によって対側四肢の振戦を誘発することが可能なことも明らかとなった。STN刺激はパーキンソン病の6例では120Hz程度の高頻度刺激開始直後から刺激対側四肢の固縮、振戦の明らかな改善を認め、無動についても有効であることが確認できた。また、painful dyskinesiaを呈して内科的治療が困難であった症例では、刺激開始後完全にpainful dyskinesiaを抑制することができた。しかし、CBD,PSPでは刺激開始直後では軽度の改善のみであり、現在経過観察中である。STN刺激の問題点としては、両側同時に電極挿入を施行した2例中1例で術後の傾眠状態が持続し、失見当識を呈したが、約1週間で改善した。その他には手術による問題は認めなかったが,今回の検討例において術前のdrug offの状態をチェックする目的で坑パーキンソン病薬を中止したところsyndrome malinを呈し、完全回復までに1週間を要した症例を経験した。 [結論]STN刺激では刺激部位を決定する方法が議論されてきたが、ニューロン活動を記録することで部位の同定が可能である。また、低頻度刺激で対側四肢の振戦を誘発することができることは重要な所見と考える。STN刺激では無動を含めてパーキンソン病の症状を改善することが可能で、painful dyskinesiaにも著効したことからパーキンソン病に対する有効な治療法と考える。今後さらに症例を増やし、長期のfollow-upの結果について検討する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 片山容一: "パーキンソン病の脳深部刺激療法" 医学のあゆみ. 186. 116-119 (1998)
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[Publications] 片山容一: "Poststroke pain control by chronic motor cortex stimulation neurotogicue caracteristics predictinra a favorable response." J.Neurosurgery. 89. 585-591 (1998)
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[Publications] 片山容一: "定位脳手術" 片山,板倉,大木,大江,編著, 401 (1998)