1997 Fiscal Year Annual Research Report
重症頭部外傷例に対する低体温療法中の脳循環・代謝変動に関する研究
Project/Area Number |
09470304
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
重森 稔 久留米大学, 医学部, 教授 (00080804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 和史 久留米大学, 医学部, 助手 (70289461)
山口 真太郎 久留米大学, 医学部, 助手 (20289458)
宮城 知也 久留米大学, 医学部, 助手 (40268909)
田口 明 久留米大学, 医学部, 助手 (40258439)
徳富 孝志 久留米大学, 医学部, 助教授 (90197872)
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Keywords | 重症脳損傷 / 低体温療法 / 頭蓋内圧 / 脳血流 / 脳代謝 / microdialysis |
Research Abstract |
GCS5以下の重症頭部外傷5例と脳血管障害5例に対してブランケットを用いた全身冷却法による低体温療法を行い、その全例に頭蓋内圧、脳温、内頚静脈血酸素飽和度、エネルギー消費量の連続モニタリングとmicrodialysis法によるグルタメイト、ラクテイト、NOの経時的測定を行った。目標温度は脳温で34℃とし、それでも頭蓋内圧のコントロールが不良であった症例では核温32℃以上の範囲内でさらに冷却した。低体温療法は発症日から平均5.5日間行った。脳温は核温より0.5から1.0℃高い値で推移した。脳温36℃以下で頭蓋内圧は有意に低下し脳潅流圧は有意に上昇した。内頚静脈酸素飽和度は脳温38℃以上で異常低値を示していたものが34℃で正常域に復した。エネルギー消費量は脳温低下に伴いほぼ直線的に低下し34℃で約80%まで低下した。グルタメイト、ラクテイト、NOは脳温36℃あるいは34℃以下で有意に低下した。核温32℃以上で維持した限りでは重篤な合併症の発現は認められなかった。しかし転帰は40%が死亡し良好な転帰が得られた症例は20%のみであった。 以上の結果から低体温療法の効果は頭蓋内圧のコントロールを容易にして脳潅流圧を維持し、代謝の低下とあわせて、脳損傷時の脳血流・代謝のuncouplingを是正するものであるということが言える。また低体温療法効果の指標として頭蓋内圧に加えグルタメイト、ラクテイト、NOの測定は有用と考えられた。しかし本療法の結果は未だ満足できるものではなく、これは本療法の限界を示すものかもしれないが、様々な生体反応(免疫反応など)の抑制に伴う副作用とその対策が今後の課題であろうと考えられる。さらに症例を重ねて検討していく予定である。
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