1999 Fiscal Year Annual Research Report
初期胚発育および着床における分子生物学的調節機構-着床不全病態の解明-
Project/Area Number |
09470365
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉村 泰典 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (10129736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久慈 直昭 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80169987)
宮崎 豊彦 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20174162)
末岡 浩 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90162833)
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Keywords | 子宮内膜 / 脱落膜 / β_1 integrin / 着床 / hatching / attachment / outgrowth |
Research Abstract |
インテグリンを介したシグナル伝達機構 1)低分子量G蛋白質Rhoは、細胞外シグナルの下流で細胞骨格を制御している。今回、着床現象におけるRhoの子宮内膜および脱落膜における発現を免疫蛍光染色やWestern Blotに検討した。増殖期および分泌期の子宮内膜におけるRhoの発現は腺上皮に、脱落膜においては間質細胞に認められた。2)脱落膜を、Rhoの選択的阻害剤であるポツリヌス菌菌体外酵素C3(C3酵素)またはRhoの活性化剤であるリゾホスファチジン酸(LPA)を添加し、2日間培養し、FITC-標識Phalloidinを用いて蛍光発色した。培養脱落膜のstress-fiberはC3酵素添加により構造が崩壊し、LPA添加により増加した。3)10日間培養したヒト妊娠初期脱落膜に、C3酵素またはLPAを添加、マウス初期胚を静置し、非添加群と比較した。脱落膜培養細胞へのC3酵素またはLPAの添加はマウス胞胚のhatching、attachmentに影響を与えなかった。C3酵素の添加は、TBのoutgrowthした面積(μm^2)を用量反応性に抑制したが、LPAの添加は、用量反応性に増加させた。以上の結果により、Rhoが、妊娠初期脱落膜に発現し、TBのoutgrowthを制御している可能性が示唆された。 着床過程におけるインテグリンの生理的意義 1)妊孕性を有する婦人の子宮内膜におけるα_vβ_3の発現は、増殖期の間質および分泌中期には腺上皮に発現が認められた。in situ hybridizationによるβ_3mRNAの発現も同様の所見を示した。2)着床不全病態を示す子宮内膜においては、分泌期中期の間質のα_vβ_3の発現が低下していた。3)体外受精・胚移植で少なくとも2回以上形態良好な胚を移植したにもかかわらず、妊娠の成立を認めなかった着床不全と考えられた症例にダナゾールを投与し、投与前後のインテグリンα_vβ_3の発現量の変化および妊娠率を検討した。12週間のダナゾール投与により、インテグリンα_vβ_3の発現が誘導され、妊娠率も有意に増加した。このように、ダナゾールによってもたらされたインテグリンα_vβ_3発現の増加が着床能を改善させたことから、インテグリンα_vβ_3は着床に重要な役割を担っており、本来、implantation windowで発現すべきインテグリンα_vβ_3の発現の低下が、着床不全の要因の1つであると考えられる。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Maruyama T,Yoshimura Y et al.: "Induction of thioredoxin,a redox-active protein,by ovarian steroid hormones during growth and differentiation of endometrial stromal cells in vitro"Endocrinology. 140. 365-372 (1999)
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[Publications] Maruyama T,Yoshimura Y et al.: "Activation of c-Src kinase is associated with in vitro decidualization of human endometrial stromal cells"Endocrinology. 140. 2632-2636 (1999)
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[Publications] Shiokawa S,Yoshimura Y et al.: "Functional role of Arg-Gly-Asp(RGD)-binding sites on β_1 integrin in embryo implantation using mouse blastocysts and human decidua"Biol Reprod. 60. 1468-1474 (1999)
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[Publications] Inagaki N,Yoshimura Y et al.: "Hysteroscopic selective salpingography"Fertil Steril. 72. 733-736 (1999)
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[Publications] Nakazawa K,Yoshimura Y et al.: "Study on melatonin in human and rat placental tissue"Trophoblast Res. 467-474 (1999)
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[Publications] Maruyama T,Yoshimura Y et al.: "Tyrosine phosphorylation and subcellular localization of focal adhesion proteins during in vitro decidualization of human endometrial stromal cells"Endocrinology. 140. 5982-5900 (1999)
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[Publications] 吉村泰典 編: "不妊診療プラクティス"中外医学社. 311 (1999)
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[Publications] 吉村泰典: "不妊症の病態生理と診断治療"真興交易医書出版部. 156 (2000)