1999 Fiscal Year Annual Research Report
口腔癌の発生、進展における遺伝子変異と癌の生物学的機能の多様性に関する研究。
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09470392
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂井 英隆 九州大学, 歯学部, 教授 (80136499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清島 保 九州大学, 歯学部, 助手 (20264054)
松尾 拡 九州大学, 歯学部, 助手 (70238971)
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Keywords | 口腔癌 / 唾液腺癌 / P53癌抑制遺伝子 / EBウイルス / ヒトパピローマウイルス / 浸潤、転移 / 分子生物学 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
平成11年度研究成果 1)口腔扁平上皮癌におけるEBウイルス(EBV)およびヒトパピローマウイルス(HPV)とp53癌抑制遺伝子との関連性についての研究結果を完成させ、EBV陽性を示す口腔扁平上皮癌症例は陰性症例と比較して予後が良いことを明らかにした。またHPV-16陽性例とp53遺伝子の点突然変異の間に有意に関連性がある示唆された。これらの研究成果を誌上発表した。(Journal of Pathology,189:34,1999.,British Journal of Oral and Maxillofacial Surgery,in press) 2)HPVとp53癌抑制遺伝子との関連性についてさらに検討するために、正常口腔粘膜および前癌病変(上皮性異形成)におけるHPV-16、-18の感染とp53癌抑制遺伝子の変異について検索した。HPV-16、-18の感染は正常口腔粘膜のあらゆる年齢層に認められ、また前癌病変では異形成の程度に関わらず認められた。このことよりHPV-16、-18の感染が直接癌の発生に関与している可能性は低いと考えられた。一方、p53癌抑制遺伝子の変異は正常口腔粘膜においては陽性例はみられず、前癌病変では14.8%に変異を認め、口腔扁平上皮癌の42.6%に陽性例を認めた昨年度の結果と総合すると、癌の発生段階にp53癌抑制遺伝子の変異が関与している事が示唆された。これらの結果を論文作成中である。 3)唾液腺悪性腫瘍の代表例である腺様嚢胞癌および粘表皮癌についてp53癌抑制遺伝子の変異、および腫瘍マーカーであるCA19-9およびCA125の局在を免疫組織化学的に検索を行った。その結果、p53癌抑制遺伝子の変異を伴う腺様嚢胞癌は予後が悪いことが示唆された。CA19-9陽性の粘表皮癌および腺様嚢胞癌では予後が良い可能性が示唆された。これらの結果はそれぞれJournal of Oral Pathology and Medicineに投稿中である。 4)我々の研究室では口腔扁平上皮癌細胞株を樹立し、この細胞株よりヌードマウス皮下に接種した場合に造腫瘍能の高いサブクローン株を得ている。(Jpn J Cancer Res,85:1257,1994)。これらの二つの細胞株におけるにおける造腫瘍能の違いの原因を検討するために種々の因子について検索中である。現在、血管内皮増殖因子(VEGF)の差異や接着因子であるカドヘリン遺伝子の変異等は認めていない。また、両細胞株についてcDNA subtraction法を用いて、発現の異なる遺伝子を検索中である。 上記の細胞株とは別に、転移能の異なる二つのクローンの口腔扁平上皮癌細胞株を有している。これらの細胞株の細胞骨格分子について検討を加え、転移能の差異がactin fiber および cytokeratinの発現の差異に起因している事を報告した。(American Journal of Pathology,in press) 5)口腔扁平上皮癌細胞における上皮増殖因子受容体(EGF receptor)遺伝子の解析を行った結果、特定の遺伝子領域の異常が癌細胞にみられ、これらの異常が癌発生マーカーに成る可能性を示した。(Cancer Research, 59:4142,1999)
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Ieyoshi Kobayashi: "Prevalence of Epstein-Barr virus in oral squamous cell carcinoma."Jouranl of Pathology. 189. 34-39 (199)
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[Publications] Ieyoshi Kobayashi: "Immunohistochemical and ultrastructual study of a papillary cystadenocarcinoma arising from the sublingual gland."Jouranl of Oral Pathology and Medicine. 28. 282-286 (1999)
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[Publications] Satoru Shintani: "Intragenic mutation analysis of the human epidermal grwoth factor receptor (EGFR) gene in malignant human oral keratinocytes."Cancer Research. 59. 4142-4147 (1999)
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[Publications] Kaori Shima: "Incidence of human papillomavirus-16 and-18 infection and p53 mutation in patients with oral squamous cell carcinoma in Japan."British Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. in press. (2000)
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[Publications] Masayo Morifuji: "Differential expression of cytokeleton after orthotopic inplamtation of newly established human tongue cancer cell lines of defined metastatic ability."American Journal of Pathology. 156・4(in press). (2000)