1997 Fiscal Year Annual Research Report
味覚の識別性ならびに嗜好性情報処理と味覚行動発現の脳機構
Project/Area Number |
09470401
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 隆 大阪大学, 人間科学部, 教授 (60028793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
硲 哲崇 大阪大学, 人間科学部, 助手 (90243154)
志村 剛 大阪大学, 人間科学部, 講師 (80150332)
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Keywords | 味覚 / 学習 / 脳機構 / 神経科学 |
Research Abstract |
本年度は以下にまとめた3つの観点からの実験を行った。実験動物には、ラットを用いた。動物は、飲食物の味と嚥下後に生じる体内異常感(とくに内臓不快感)の因果関係を学習し、その味を長く記憶にとどめ、以後その味を有する物質を避けて摂取しようとしない。我々の実験では、この味覚嫌悪学習のパラダイムとして、ラットにある味刺激(条件刺激)を充分に摂取させた後、内臓不快感を生じさせる塩化リチウム(無条件刺激)を腹腔内投与することにより、条件刺激の味を覚えさせて、その摂取を拒否させる方法を採用した。 1.行動学的実験:味覚嫌悪学習(CTA)獲得に細胞性癌遺伝子の1つであるc-fosの発現が本質的に関与するのか否かを検討するため、c-fos遺伝子ノックアウトマウスを使ってCTAの獲得能を調べた。ノックアウトマウスは、4基本味に対する味覚感受性、塩化リチウム投与による内臓不快感感受性などは正常動物と差が認められなかった。学習能についてはやや低下する傾向がみられたもののCTAを獲得した。c-fosは本質的な役割を演じない可能性がある。 免疫組織化学的実験:ラットの結合腕傍核はc-fos発現を指標としたとき、味覚の識別性の側面と情動性の側面の機能を独立して処理していることが示唆された。つまり、食塩水の濃度を変えたり、食塩欠乏下で与えたり、大脳皮質味覚野を破壊した実験から、背側外側亜核は好ましい溶液の摂取行動に関与し、中心内側亜核はナトリウムの味覚情報が投射することが明らかとなった。 行動薬理学的実験:ベンゾジアゼピン誘導体のジアゼパムや麻薬系のモルヒネをラットに投与すると好ましい味溶液の摂取量が増えるが、腹側被蓋野のドーパミン細胞を破壊するとこの効果が生じないことがわかった。ド-バミン系が摂取行動に直接かかわる場所と考えられる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Y.Yasoshima and T.Yamamoto: "Rat gustatory memory requires protein kinase C activity〜." Neuro Report. 8. 1363-1367 (1997)
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[Publications] N.Sakai and T.Yamamoto: "Condition taste aversion and c-fos expression in the〜." Neuro Report. 8. 2215-2220 (1997)
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[Publications] T.Yamamoto, N.Sako, N.Sakai and A.Iwafune: "Gustatory and visceral inputs to the amygdala of the〜." Neuroscience Letters. 226. 127-130 (1997)
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[Publications] T.Shimura, Z.Karadi and T.Yamamoto: "Facilitation of glutamate release in the ventromedial〜." Neuroscience Research. 28. 281-284 (1997)
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[Publications] T.Shimura, H.Tanaka and T.Yamamoto: "Salient responsiveness of parabrachial neurons to the〜." Neuroscience. 81. 239-247 (1997)
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[Publications] T.Shimura, M.Komori and T.Yamamoto: "Acute Sodium deficiency reduces gustatory responsiveness〜." Neuroscience letters. 236. 33-36 (1997)