1998 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト細胞の老化機構の解析-特に寿命関連遺伝子の多段階変異について-
Project/Area Number |
09470406
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
筒井 健機 日本歯科大学, 歯学部, 教授 (00097065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 友起子 日本歯科大学, 歯学部, 助手 (20281438)
長谷川 紅子 日本歯科大学, 歯学部, 講師 (70053014)
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Keywords | 老化 / 不死化 / 老化遺伝子 |
Research Abstract |
HPV16型E6、7EおよびE6/E7遺伝子の移入によって不死化したヒト線維芽細胞の不死化過程におけるテロメ7長とテロメラーゼ活性について研究した。その結果、 1) E6遺伝子の単独移入により不死化した1クローンでは,テロメラーゼ活性はPD83以後陽性になった。テロメ7長はPD88まで漸次減少したが、テロメラーゼ活性陽性後,約3Kbで維持された。 2) E7遺伝子の単独移入により不死化した4クローンでは、テロメラーゼ活性はいずれもPDが250を超えても陰性であった。テロメア長は1クローンではPD56以後、約5Kbで維持されたが、残り3クローンではそれぞれPD88、92、162以後、12〜17Kbで維持された。 3) E6/E7遺伝子の移入により不死化した3クローンのうち2クローンでは、テロメラーゼ活性はそれぞれPD85と133以後陽性になった。これらのクローンのテロメラーゼ活性陽性前のテロメア長はPDの増加に伴い減少したが、陽性後は約3Kbで維持された。他の1クローンのテロメラーゼ活性はPDが300を超えても陰性であった。このクローンのテロメア長はPDが135までは減少したが、それ以後、約10Kbで維持された。 4) テロメラーゼ構成遺伝子のhTERCとhTEP1の発現はすべての不死化クローンで認められたが、hTERTの発現はテロメラーゼ活性陰性クローンでは認められず、E6遺伝子単独移入で不死化した1クローンを除いたすべてのテロメラーゼ活性陽性クローンで認められた。 5) p53遺伝子(エクソン5〜8)の突然変異はE7遺伝子単独移入で不死化した1クローンでは認められたが、他の不死化クローンでは認められなかった。 6) すべての不死化クローンに染色体不安定性やミニサテライト不安定性が認められたが、マイクロサテライト不安定性は認められなかった。 これらのことから、テロメラーゼ活性陽性のクローンでは短いテロメア長(約3Kb)が、陰性の不死化クローンでは1クローンを除いてすべて長いテロメア長(10〜17Kb)が維持され、両者間でテロメア長の制御機構が異なることがわかった。また、すべての不死化クローンに染色体不安定性やミニサテライト不安定性が認められたことから、不死化細胞のテロメア維持機構にゲノム不安定性が関与していることが示された。
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[Publications] 筒井健機: "わかりやすい“がん細胞"への道のり" 日歯医師会誌. 50(10). 963-970 (1998)
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[Publications] Tsutsui,T.: "Bisphenol-A induces cellular transformation,aneuploidy and DNA adduct formation in cultured Syrian hamster embryo cells." Int.J.Cancer. 75(2). 290-294 (1998)
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[Publications] 佐藤英継: "ヒト歯肉由来培養ケラチノサイトにおけるテトラサイクリン系抗生物質の細胞生存率と細胞内濃度に及ぼす効果" 日歯周誌. 40(1). 1-8 (1998)
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[Publications] Kumakura,S.: "Loss of heterozygosity on chromosome 6 in immortal human fibroblasts." J.Nippon Dent.Univ.1. 16-19 (1998)
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[Publications] Kawakami,T.: "Inhibition by 17 β-estradiol of interleukin-1α production of cultured human diploid fibroblasts." J.Nippon Dent.Univ.1. 33-39 (1998)
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[Publications] 五十嵐史征: "Origin(-)SV40遺伝子とc-fos遺伝子の移入によるヒト歯肉由来培養ケラチノサイトの不死化とその性状" 歯学. 86(1). 37-47 (1998)
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[Publications] 筒井健機: "シリアン・ハムスター胎仔(SHE)細胞による非変異原性がん原物質のがん化機構の解析" 環境変異原研究. 20(2). 137-148 (1998)
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[Publications] 上濱 正: "塩酸ミノサイクリンのヒト歯根膜由来培養線維芽細胞に対する作用について" 歯学. 86(2). 320-328 (1998)
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[Publications] 筒井健機: "今,遺伝子はここまでわかってきた-予知遺伝子検査による病気の予測-" 日歯医師会誌. 51(10). 1007-1014 (1998)
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[Publications] 筒井健機: "(株)一世出版" 歯科薬物療法総論, 76 (1998)